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「……なまえさん?」

完全に眠ってしまったのを確認するために声をかけるが、やはり返事はなかった。

彼は片腕をついて半身を起こすと、なまえの顔を覗き込んだ。

顎に指をかけ、僅かに押すと、うっすらと唇が開く。

どこまでも無防備なその姿に、彼は唇の端を吊り上げて笑った。

なまえが彼を異性として意識しないように極力努力しているのを彼は知っていた。
だから彼はそれを利用して彼女の領域を侵していく。
じわじわと少しずつ、確実に。

「ぼくのような人間を信用した貴女が悪い」

彼は誘われるように彼女に口付けていた。
薄く開かれた唇の隙間から舌を差し入れ、口腔をねぶる。

「……ん……」

ゆっくりと時間をかけて口付けを堪能してから、彼はようやくなまえを解放してやった。

濡れた唇も艶めかしく、なまえは何も知らずに眠っている。

その喉元から鎖骨にかけてを彼はじっと見つめて、これくらいは許されるだろうと、白い肌に舌を這わせた。

痕はつけない。

今は、まだ。

いずれこの腕の中に堕ちて来るその時を夢見て、彼もまたなまえを抱き締めて眠りにつくのだった。


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