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ずるり……と、それが抜け出していく感触に背筋がざわめく。
ぬぽっといやらしい音を立てて完全に抜けきったそれは、二人分の体液にまみれて湯気を立ちのぼらせていた。
先ほどまで胎内を埋め尽くしていたそれが引き抜かれたあと。
ぽかりと口を開いているままのそこからは白濁した精がトロトロと溢れ出ていた。

「大丈夫ですか?なまえさん」

こちらの身体を労る言葉をかけられると共に、優しく、優しく、汗で湿った髪を撫で梳かれる。
優しい手つきにも関わらず、肌が粟立って身震いしたのは、この男が恐ろしくて仕方がないからだ。

フョードル・ドストエフスキー。

地下を拠点とする盗賊団「死の家の鼠」の頭目にして、殺人結社「天人五衰」の構成員。

魔人と称されるこの男に、ある日突然拉致監禁されて、もう二週間近く経つ。
その短いようで途方もなく長く感じられる間に身体のほうは完全に屈服させられてしまっていた。
そのことが悔しくてならない。

ティッシュであれやこれやを拭き取った後で。
裸身にガウンを羽織った彼は、この部屋に備え付けてある冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して封を切った。
彼が水を飲み下すと、白い喉で喉仏がなまめかしく動くのが見えて、思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。
そんな私の反応を目敏く見てとった彼が薄く笑う。

「ああ、すみません。貴女にも差し上げますね」

ベッドの上で後退りしようにも逃げ場はない。
ベッドに片膝をつき、私の上に覆い被さった彼が深く唇を合わせてくる。
舌でこじ開けられた口の中に冷えた水が少しずつ流し込まれてきて、私はなすすべもなくそれを飲み込んだ。

「ふぇ……」

「どうして泣きそうなんですか。ちゃんと優しくしてあげているでしょう」

私の濡れた唇をぺろっと舐めてから口を離した彼が苦笑を浮かべてみせる。

「いま綺麗に洗ってあげます」

騎士が姫君にするような恭しい手つきで私の手を取り、薬指にキスを落とした彼は私を抱き上げた。
そのまま隣接するバスルームへと歩いていく。
抵抗しようにも、ぐったりとしていて動けそうにない。

「愛していますよ。貴女だけを心から」

ひどいことをされているはずなのに、そんな風に切々と告げられると胸がきゅんと締め付けられる。

「これほどまでにぼくの心を奪った責任を取って下さい。何があろうとも、決して貴女を離しはしない。貴女の身も心もぼくのものですよ。──永久に」

言われて思い出すのは、半ば無理矢理にサインさせられたあの日のこと。
それが何のための書類かわかった瞬間、血の気が引いたのを覚えている。

「愛しています。可愛い可愛い、ぼくの奥さん」

薬指に嵌められた手錠代わりの指輪が私を彼に繋いでいて、逃げられない。


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