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※学スト


クラスメイトに太宰治という男子がいる。

入退院を繰り返して何度も留年をしているため、誰も彼の本当の年齢を知らないのだとか。
あくまでも噂話なので真偽のほどは定かではない。
しかし、そんなところがミステリアスでいいといって、彼に夢中になる女の子は多く、太宰くんはそれはもうよくおモテになる。

「君が好きだ」

何の因果か、その太宰くんにいま告白されている。

どうしてこうなったのかよくわからない。
太宰くんとは特別仲が良いわけでもなく、普通にクラスメイトの一人として接してきたはずだ。
さては罰ゲームか何かなのだろうと思ったのだが、太宰くんは真剣そのものだ。
いつものおちゃらけた様子は微塵もなく、ただ熱い激情を秘めた眼差しを私に注いでいる。

「あの、太宰くん?」

「なんだい?」

「どうして私なの?」

すると、太宰くんは、いままでいかに私を見つめてきたか、息せききったように語り始めた。

「あれは穏やかな春の陽射しの下、私がこの大木の下で昼寝をしていた時のことだ。君がわざわざ私を探しに来てくれて、優しく目覚めさせてくれたのを覚えているかい?もちろん覚えているよね。忘れるはずがない。目を開けた瞬間飛び込んできた、はにかむような微笑みを浮かべた君に、私の心は刹那の内に捕らわれてしまったんだ。それ以来、私はずっと君を見つめてきた。雨の日も晴れの日も、病めるときも健やかなるときも、ずっと、ずっと、ずっとね。寝ても覚めても、想うのは、私の下で淫らに乱れ悶える君のあでやかな姿ばかり。いつしか想像は現実との境目を越えて君は私のものであるべきなのだと思うに至ったのだよ」

「怖いよ太宰くん」

怯える私を太宰くんはうっとりと見つめてくる。
繰り返すけど、怖いよ太宰くん。

「ちょっと待って下さい」

ここでまさかの乱入者が。

木の陰から現れたその人物を見た途端、私の心臓は恐怖で縮みあがった。

「彼女はぼくのものですよ、太宰くん」

身に覚えのないことを堂々と宣言した彼は、近所の学園に外国から転入してきた転入生で私に何かとつきまとってくる、有り体に言うとストーカーだった。

「フョードルくん、変なこと言わないで!」

「と言っているけれど」

「照れているだけです。なまえさんは恥ずかしがり屋さんですから」

「違う!」

「わかった。察するに君は彼女のストーカーだね」

太宰くんの優秀な頭脳は私が話す前に真実に辿り着いていた。すごい。

「なまえちゃんの恋人は、何を隠そうこの私だ。彼女が浮気などするはずがない」

「違う!」

「わかりました。察するに貴方は彼女のストーカーですね」

フョードルくんの優秀な頭脳は私が話す前に真実に辿り着いていた。
そうです。いままさになったところです。

「彼女の恋人を名乗る男が二人……実に可笑しな事態だと思わないかい?」

「どちらかが思い込みの激しい勘違い男であることは間違いありませんね」

両方だよ!


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