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お姉ちゃんが結婚することになった。
相手はイタリアを拠点に世界中を飛び回ってお仕事してる人だそうだ。
しかも超イケメンらしいよ。すごい!

なんて無邪気に喜んでいられたのは、衝撃の事実を告げられる前までだった。

お義兄さんになる人はアンダーグラウンドな世界のお仕事をしていること、
その人とお姉ちゃんが結婚することで、最悪の場合、身内である私達家族にも何らかの危険が及ぶ可能性があること、
でも、お義兄さんの組織(!)が護衛を手配してくれることになっているということを説明されたのだ。

「ま…まさか、任侠の世界の人、とか…?」

「ああ、うん、そんなとこかな。イタリアンマフィアの暗殺部隊だから」

「……自称マフィアじゃなくて?」

「もちろんホンモノだよ」

さよなら平穏。
こうして並盛町での私のごく普通の並盛りライフは幕を閉じたのだった。

数日後、お義兄さんになる人にも紹介された。
銀髪ロン毛の想像以上のイケメンだったけど、怖いお仕事をしている人なのだと知っているせいでビクビクしていた私に、彼は気さくな調子で話してくれた。

「スクアーロ、さん?」

「もっと砕けた呼び方でいいぜぇ。義理の兄妹になるんだからなぁ」

「じゃあ……お兄ちゃん…?」

片方の唇の端っこを持ち上げてニヤッと笑ったスクアーロさんに頭をガシガシと荒っぽく撫でられる。
髪の毛はぐしゃぐしゃになったけど、私の頭の中にはお花畑が広がっていた。
イケメンのお兄ちゃん……イイ……!


そして、結婚式当日。
イタリアのシチリアにある、ファミリーと縁が深いという教会で厳かな式を挙げた後は、お城に場所を移してパーティーが行われた。
日本でいう披露宴である。

いかにもな見た目の怖そうな男の人や、どう見ても暗殺には向いてないんじゃないかと思うド派手なカラーリングのモヒカンの人に混ざって、私と同じ歳ぐらいの男の子がいたことに驚いた。
フツーにコンビニの前に座ってダベってる学生っぽい喋り方だったので更にびっくりだ。

「日本語、上手ですね。全然違和感ないです」

「とーぜんじゃん。だって俺、王子だし」

…ヤバい。お触りしちゃいけない人だったようだ。
いや、それを言ったらこの場にいる人間みんなそうなんだけども。

「ベルはある国の王族なんだ。事情があって陰匿されて育ったけど、イザコザさえなければ今頃は正真正銘王子様として世界的な有名人になってただろうね」

反応に困っていると、てるてる坊主みたいな恰好をした赤ちゃんがそう説明してくれた。

「……自称王子じゃなくて?」

「残念ながらホンモノだよ」

そうだよね、赤ちゃんがフワフワ宙に浮かんでるくらいだからね。
王族出身の隊員がいたっておかしくないよね。いや、おかしいよ。
ツッコミどころ満載だよ!
お姉ちゃんの結婚報告以来、今まで“普通”だと思っていた世界が音を立てて崩壊し続けている。



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