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バレンティノの前後挟んで3日間を異国で任務とか、うちのボスは絶対いい死に方はしないと思う。

そうぼやいた私を宥めたのは、同じく日本へと同行してきたスクアーロだった。

スクアーロは彼が認めた人間に対しては情が深い。
特にザンザスは別格だ。
常日頃、お互いにカスザメだのクソボスだのと罵りあってはいても、心の深い場所でしっかりとした絆で結ばれているのを感じる。
男同士の友情とかそんな暑苦しい系統のものではないけれど、二人の絆の強固さは恋人である私にある種の嫉妬心を覚えさせるほどだった。

腹いせに、羨ましいくらい長いスクアーロの脚の脛のあたりを蹴飛ばす。

「うお"ぉい!いてぇぞぉ!!」

苦しめ。
叫ぶスクアーロを無視して私はドアをノックした。

「ボス、お呼びですか」

「入れ」

返事は直ぐに返ってきた。待ち構えていたのだから当然か。

「失礼します」

ドアを開き、室内へと入る。

日本とは思えないヨーロッパの城の一室のような部屋だ。
一番いいホテルの一番いい部屋を探したのだろう。
成金が好むような華美さとは違う、華やかさと美しさが絶妙なバランスを誇る豪華な部屋だ。
ボスは性格はアレだが、センスがいい。

部屋の中には二人の人間がいた。
片方は私に任務を与えたヴァリアーのボス、ザンザス。
そしてもう一人はまだ少女と呼べる年齢だと思われる小柄で可愛らしい女性だった。

あどけない仕草といい、清楚な印象を受ける容姿といい、ワイルドな男前のボスとは、まるで対の存在のようだと思った。
蜂蜜色の大きな瞳がきょとんと私を見ている。

ボス、ロリコンだったんですか、ボス。

「真奈だ」

「初めまして、沢田真奈です」

「なまえと申します」

それが彼女との初めての対面だった。

沢田真奈。
その名前だけは以前から知っていた。

ボンゴレ10代目・沢田綱吉の双子の姉で、門外顧問・沢田家光の長女。
どんな紆余曲折があったかは知らないが、我らがボスの心を見事に射止めてしまった女性だ。

部屋を辞してスクアーロと二人きりになってから、さすがに犯罪じゃないのかと彼に囁くと、

「ボスには言うなよ。殺されるぞぉ…」

と言われた。
そうか、一応自覚はあるのか。
10歳差という年齢差を別にしても、色々と規格外な感じにデカそうなボスに、あんな小さな──いや、これ以上考えるのはよそう。
彼女は脅されてボスの言いなりになっているわけではないのだから。

……ああ、でも、そういうのもちょっと萌えるかもしれない。


『いや……お願い、許してザンザス…いやあぁっ…!』

『うるせえ、大人しくしろ。家光やお前の弟がどうなってもいいのか?』

『あぁ…ツナ…お父さぁぁん!』


「──ダメだわ。あまりにも萌え…いえ、酷すぎる」

「何だぁ…? お前、今日はおかしいぞぉ」

スクアーロが怪訝そうな、それでいてどことなく心配そうでもある表情で私の顔を覗き込む。
この男の無駄に綺麗な顔立ちは年齢を重ねるにつれますます磨きがかかって艶を増していくようだ。
髪も綺麗だし。
まさしく美人と称するに相応しい容貌の持ち主だった。



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