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「何かもう、ごめんなさい」

項垂れたなまえに対して、謝罪を受けたスクアーロはわけが分からないといった顔をしている。

彼の均整のとれた肉体を包むのは、日本人なら誰もが知っているだろうファストファッション店のパーカー付きセーターに、同じメーカーのスリムジーンズ。
なまえが着替え用にと買い置きしておいた物だ。
長い銀髪と冷たく感じるほど整った彼の容貌とはミスマッチな服装のはずなのに、これがびっくりするくらい違和感なく自然にカッコよく着こなしている。

それだけでもかなり申し訳ない気持ちになってくるのだが、テーブルの上に並ぶ料理は正月にまったく関係ないメニューばかりだった。

「せっかくお正月に来てくれたのに、全然日本のお正月らしいことが出来なくて……」

「気にするなぁ。お互い昨日まで仕事だったんだ」

なんだ、そんな事を気にしていたのかと笑って、スクアーロは白米をかきこんだ。
豪快なのに下品にならない食べっぷりは見ていて気持ちがいい。

「疲れてんのに急に押しかけて悪かったなぁ」

「そんなっ。不規則で忙しいお仕事なのに、ちゃんと時間を作って来てくれてすごく嬉しいです!」

愛されてる感じがして。

言葉にしなかったそんな想いが伝わったのか、味噌汁を飲んだスクアーロはニヤッと笑った。

「お"う。愛してるぜぇ」

「ふぎゃーー!不意討ち禁止っっ!」

なまえは近くにあったクッションを赤くなった自分の顔に押し付けて身悶えまくった。


食事の後は、まったりしながらスクアーロとイチャついた。
昨日までの…いや、去年一年間の疲れが癒されるようだ。

「初詣は行かなくていいのかぁ?」

何故マフィアの暗殺部隊のボスの右腕が日本の行事に詳しいのか。

「初詣はいいですけど、お買い物には行きたいです。ボスさんと同僚の人達にお土産買うので、帰ったら渡して下さいね」

スクアーロはそんな事までしてやらなくていいと不満そうだが、そうはいかない。
彼の同僚にはなんだかんだとよくして貰っているのだ。

お土産と言えば、マーモンには、以前、時代劇の悪代官と越後屋の密談場面で登場する小判賄賂を再現した山吹色のお菓子セットを贈ったら、いたく感激された。
ルッスーリアには日本限定販売のボディケア用品の代理購入を頼まれた事があり、お返しに向こうのコスメバッグを送って貰ったりもした。

「うお"ぉい、行くぞぉ」

「はーい」

既にジャケットを着込んだスクアーロと共に玄関を出る。
途端に氷のように冷たい寒風が吹き付けてきた。

「うあああ…寒いぃ……!」

「鍛えてねぇからだぁ」

そう笑いながらもスクアーロはなまえを引き寄せた。
ぴたりと寄り添う事で風を遮って貰い、彼の体温を分け与えて貰う。
腰なんかほっそいのに、筋肉はしっかりついててイイ身体してるなぁ。
外でなければ撫で回していたかもしれない。
セクハラはされると恥ずかしいが、するのは全然平気だ。



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