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今日もいつものように仕事を終えて帰宅した。
誕生日だからといって何も変わらない。
友人からおめでとうのメッセージを貰った以外はいつも通りの日常だ。

(メールは……やっぱり来てない、か…)

自宅近くまで来たところでもう一度携帯電話を確認してみたが、一番祝って欲しかった人物からのメールはやはり届いていなかった。
胸の内にじわじわと悲しみが広がっていく。

でもまだ今日は終わっていないんだし、と自分を励まして玄関のドアの前まで来たなまえは、鞄から鍵を取り出そうとした手を止めた。

部屋の中の明かりがついている。

まさか、とドアノブに手をかけてみると、朝確かに施錠して出掛けたはずのそこは何の抵抗もなく開いた。

「帰ったかぁ」

荒っぽい歩き方なのに不思議と音が立たない独特の歩き方で奥から出て来た男に、なまえは安堵を感じながら驚いて目を丸くした。

「スクアーロ!?」

「お"う。久しぶりだなぁ」

間違いなくスクアーロだ。
上着を脱ぎ、シャツの袖を肘のあたりまで腕捲りした彼は、真っ白な歯を見せて笑った。

「え、うそ、どうして…?」

どうして、なんで、と疑問が沸き上がってきたが、とりあえずその剥き出しの肘の男っぽさにあり得ないほど萌えた。
色は白いのに適度に骨っぽくてがっしりしている。

「今日はお前の誕生日だろうがぁ。祝いに来んのは当然だ」

いかにも当然の事だと言わんばかりにさらりと言い切られて、なまえは一瞬言葉を失った。
嬉しいのと照れくさいので顔を赤らめながら、ありがとう、と呟いたなまえの頭をスクアーロは大きな手でガシガシ撫でてくれた。

スクアーロがわざわざ会いに来てくれたことにも驚いたが、室内に入って更に驚くことになった。
キッチンを借りたというから、何かおつまみでも作って食べたのかと思ったら、美味しそうな料理が並んでいたからだ。

「えっ、これ全部スクアーロが作ったの?」

「ん"? まあな」

「すごい!すごく美味しそう!」

「うお"ぉい、喜ぶのは食ってからにしろぉ。味は保証出来ないぜぇ」

スクアーロはそう言ったが、食べ始めるとそれが謙遜であることはすぐに分かった。
頭も良くて色々な知識がある人だとは知っていたけれど、本当に何でも器用にこなしてしまうようだ。
というか、こんなマメな人だなんて知らなかった。

「ルッスーリアに食材ならこれを持ってけとあれこれ買わされてオリーブオイルまで持たせられてなぁ。お陰で大荷物になったぜぇ」

そう愚痴るものの、美味しい美味しいと大喜びで食べるなまえを見て、彼も満更でもなさそうだった。

「ついでにプレゼントも預かってきた」

「プレゼント…私の?」

「他に誰がいるんだぁ?」

スクアーロが笑って立ち上がる。

ちょっと待ってろと言い置いて隣の部屋に消えた彼が、幾つもの箱を抱えて戻ってきたため、なまえは驚いてフォークを取り落としかけた。
さっき彼が大荷物と言ったのはこれのせいだったのだ。



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