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「Chiao, Bella(よお、かわい子ちゃん)」


この店はブッフェ形式で、アルコールを注文すれば料理は食べ放題という有り難いシステムになっている。
なので、ちょっと一杯のついでに夕食も済ませてしまうのが日課になっていた。
そんな時だった。
声をかけられたのは。

いかにも伊達男然とした澄ました顔をしていた男が、整った眉をツイと上げたかと思うと、ふ、と笑みをこぼした。
たぶん、なまえが甘いブリオッシュを食べながら、ミルクたっぷりのラッテ・マキアートを飲んでいたせいだ。
細められた瞳が「お子様味覚だな」と笑っている。

「甘い飲み物が好きなのか」

「うん、まあ…その時の気分にもよるけど」

思わず言い訳がましい口調になってしまう。
でも本当は甘い飲み物は大好きだった。
トリノのバールで飲んだビチェリンは最高に美味しかった。

「酒は飲まねーのか?」

「お酒も好きだよ」

「なら、一杯おごらせてくれ」

男は返事を聞く前にさっさと注文してしまった。
やがて到着したワインを飲み交わす内に、彼がリボーンという名であること、休暇でこの町に立ち寄ったことなどを聞かされ、そして、彼はなまえについてそれ以上の情報を得ていた。

誘導尋問というほどではないけど、何気ない会話から情報を引き出すのが驚くほど巧い。
フリーランスの探偵か何かかと思ったくらいだ。
フリーランスと限定したのは、どことなく一人でさっさと仕事を片付けるほうが性に合っていそうな雰囲気があったからだ。
なまえがそう言うと、

「近いが違うな。でも、いい線行ってるぞ」

リボーンは面白そうに笑って言った。

彼はお喋りな男ではなかったが、寡黙な男でもなかった。
話題作りが上手く、なまえを飽きさせずに、ウィットに富んだ会話で楽しませてくれた。

だからだろうか。

彼がおごってくれた上等なワインによる酔いも手伝って、その夜の内に男女の関係を結んでしまったのは。



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