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振られてしまった。

スクアーロの言う通り、大人の彼に比べれば中学生のなまえなんてまだ全然子供で、考え方もお子様に思えるのだろう。
それでもショックなものはショックなのだ。
なまえは子供なりに真剣に恋をしていた。
だから失恋の傷も大きい。

食事も喉を通らないなまえを心配して、イーピンやランボまでがなまえの側から離れなかった。

「ランボくん、頭から何か突き出てるけど…」

「これは秘密なんだもんね!10年後に行ける10年バズーカだってことは秘密なんだもんね!」

「へえ…そんな便利な道具があるんだ」

素直に感心したなまえに、ランボはちょっと誇らしげに胸を張った。
曰く、彼が優秀だから彼のファミリーのボスがわざわざ持たせてくれたらしい。
本当かどうか怪しいが、なまえは、うんうんと頷いて話を聞いてやった。

「本当に10年後に行けるなら私も行ってみたいなぁ」

「なら、試してみるんだもんね!」

「えっ?」

ランボのほうを見ると、大きな筒状の道具の黒々とした口が真っ直ぐなまえの顔をとらえていた。
そこから何かが発射されたのだと思うが、気付いたら白い煙に包まれていた。

「ごほ、ごほ…ランボくん…今のは…?」

誰かが近くにいる。
なまえはてっきりランボだと思っていたのだが、煙が晴れるとそれは間違いだということがわかった。

「ん"ん?」

聞こえた声に心臓を鷲掴まれたような気持ちになりながら、その人物を見上げる。

「10年前のなまえかぁ」

それはスクアーロだった。
髪型が違うし、何よりなまえが知っている彼より男らしさも色っぽさもパワーアップしているが、間違いなくスクアーロだ。

「まさかこのタイミングで入れ替わるとはなぁ…」

苦笑した彼はなまえの頭をやや乱暴にわしゃわしゃと撫でた。

「悪かったなぁ、振っちまって。俺もまさかあの時はお前に惚れる事になるとは思ってもみなかったんだぁ」

「え……は?」

「お陰で、いま口説き落とすのに苦労してるぜぇ。愛してるって言っても、何よ今更ってつれなくてなぁ」

「な、な、…」

「時間だ。本当に悪かったな。反省してるから、10年経ったら許して口説かれてくれ」

ぼんっ!

再び煙に包まれたかと思うと、なまえは元の場所に戻っていた。
なまえが未来に行っていた間、入れ替わりに未来の自分が来ていたらしく、イーピンが「なまえさん、美人だった」と誉めてくれたが、その言葉は半分もなまえの脳みそに届いていなかった。

何ということだ。

10年後好きになってくれるなら、今好きになってくれてもいいのに。
そうしたらご飯も喉を通らなくなる程のショックを受けることもなかったのに。

「うう……スクアーロさんの馬鹿…!!」

考えれば考えるほど怒りが燃えたぎってくる。
冗談じゃない。
どんだけ美形で男前だかしらないが、あんな傲慢で自分勝手な男に屈してたまるものか。
絶対に、絶対に、許さない。
絶対に、絶対にだ。

10年後。過去の己の所行を後悔し、謝り倒して口説き倒したスクアーロの想いが成就するかどうか。
それは10年後の未来になってみなければわからない。


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