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梅雨入りもまだだというのに既に真夏日が続いている。

スクアーロが日本の我が家を訪ねて来たのは、そんな暑いある日のことだった。
多忙な彼だが、こうして定期的に会いに来てくれているのだ。

「どっか遊びに行くかぁ」

私が出したお茶を口にするなりスクアーロが言った。
飛行機での移動で疲れているのではと思ったが、さすがヴァリアーの幹部。私の想像以上に体力があるようだ。

「何処へ行きたい?」

「水族館!」

問いかけに一も二もなく答えたのは、ずっと彼と行きたいと思っていた願望が口に出た結果だった。

「絶対、スクアーロと水族館に行きたかったの」

「そうか、いいぞぉ」

がしがしと頭を撫でられる。
荒っぽいが彼らしい愛情表現だ。

というわけで、私達は電車に乗って水族館へと向かった。

電車のドアに背を預けて立つスクアーロは、黙っていればモデルかムービースターのようにも見える。
はっきり言ってカッコイイ。
何がどうなっているのかわからないが、10年前より格段に色気が増していい男になっている気がする。
自慢の彼氏だ。

駅に着くと、スクアーロはますます周囲の注目を集めていた。
あからさまにスマホを取り出して撮影しようとする女の子までいる。
さすがにそれは注意したが、向こうもまさか暗殺部隊の作戦隊長が街中を歩いているとは思いもよらなかっただろう。

橋を渡って水族館の敷地内に入ると、そこは親子連れやカップルで賑わっていた。
ここはメインの水族館の他にアトラクションが幾つかあるので、休日ともなれば大勢の人々が訪れる観光スポットなのである。

「イルカのショーも見たい!」

チケット売り場に並びながら言えば、スクアーロは片手で無造作に髪を掻き上げた。

「濡れちまうぞ」

「覚悟の上だよ」

「いい度胸だぁ」

ニヤリと笑ったスクアーロからフリーパスになるリストバンドを受け取る。

大きな三角形の屋根がある建物に入り、リストバンドを見せて順路通りに進んで行く。
水族館の中はひんやりしていて薄暗く、まるで海の中にいるようだ。

「見て、イワシのトルネード!」

「餌で制御してるのかぁ。なるほどな」

餌の時間にだけ見られる水中ショーである。
丁度良い時間に来られて良かった。

「あ、サメだ」

「ホオジロザメかぁ」

「カッコイイね」

「そうかぁ?」

「だって『スクアーロ』だもん」

そう言うと、薄暗いのをいいことに素早くキスをされた。
やっぱりカッコイイ。

「イルカ可愛い〜」

「よく慣れてるな」

無数の魚が泳ぐトンネルの中をエスカレーターで上がれば、もうすぐおしまいだ。

「土産物は見なくていいのかぁ?」

「どうしよう…」

「ショーが終わった後は混むだろうな」

「そっか、じゃあちょっとだけ見て行ってもいい?」

「ゆっくりでいいぞぉ。時間はまだある」

「うん、ありがとう」

店の中をぐるりと周り、結局サメのぬいぐるみと珊瑚のピアスを買う事にした。

「スクアーロ、早く早く!」

「うお"ぉい!そんなに急がなくてもイルカは逃げねぇぞぉ!」

呆れた風に言いながらも手を繋いでくれる。

私は美人な彼氏の手を引いてイルカのショーが行われるステージへと走って行った。


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