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「二人きりのほうがいいかい?」

なまえをこんな風にしたであろう男が、悪びれた様子もなくにこやかに問いかける。

「ごめんごめん。じゃあ僕は外に出てるから、ごゆっくり」

とても話など出来る状態でないことを知っていながら、白蘭は気さくにランボの肩をぽんと叩いて部屋から出ていった。
彼はこの残酷な遊びを心から楽しんでいるのだ。

だが、その白蘭でさえも予想していなかった事態が起こった。
自我を奪われていたはずのなまえが椅子から立ち上がったのだ。

「なまえさん…?」

「ごめんね、ランボ」

ランボの前に屈み込んだ彼女は、そっと白い手で彼の頭を撫でた。

「謝るのは俺のほうです……俺は何も出来なかった…みんな…みんな死んでしまった……今も、貴女を助けることも出来ない…!」

小さい子供に戻ったように泣きじゃくりたいのを必死に我慢するランボの頭をなまえは優しく撫で続けている。

「お願いがあるの」

と彼女は言った。

「何ですか?」

ランボは涙を堪えて赤くなった目で、縋るようになまえを見上げる。

「私が死んだら、あの人と一緒に埋めて」

ランボは一瞬凍りついた後、何を言っているんですかなまえさん!、どうかそんな悲しいことを言わないで下さい!と半ベソをかいて懇願した。
そんなランボを見て、困ったように微笑んでいたなまえの顔が今でも忘れられない。
彼女はきっとその願いを伝えるためだけに最後の力を振り絞ったのだ。


あれから更に年月は流れ、ランボは25歳になった。
ミルフィオーレの脅威は無くなったとはいえ、未だに世界中にその傷跡が残っており、ボヴィーノファミリーの一人としてランボも復興の手伝いをしている。

今日はその合間を縫って墓参りに来ているところだった。
なまえの願い通り、彼女は愛する男と同じ場所で眠っている。

だが、本当にこれで良かったのだろうか?

なまえの願いを叶えた今もランボの胸は晴れなかった。
他に何かもっと出来る事があったのではないかと悔やまれてならないのだ。

今の自分は、もう泣き虫だったあの頃の自分ではない。
身も心も遥かに強くなった。
今なら彼らの力になれるのに──そう考えるたび、ランボの胸は張り裂けそうに痛むのだ。

「なまえさん、俺は────」

呟きかけたランボの身体が、不意に白煙に包まれて消えた。



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