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今日は聖ルドルフの他の面々もテニススクールにやって来ていた。
最初にこの自由の森で出逢った時と同じメンバーである。
なまえにとっても既にお馴染みの顔ばかりだ。

パン、スパン、とボールを打つ音が途切れたところで、観月が休憩の指示を出した。
喉の渇きを覚えて大きく息をついたなまえに観月が歩み寄ってくる。

「よく頑張りましたね」

「観月さん」

「ご褒美にこれをあげましょう。少しは喉の渇きが潤いますよ」

「あっ、チェリーキャンディ!有難うございます。いただきまーす」

「はい、どうぞ」

「あ〜ん」

口を開けると、観月の長い指がキャンディを摘まんで口の中に入れてくれた。
雛に餌をやる親鳥みたいだ。
ぱくっとした拍子に観月の指に唇が触れてしまった。

「あ…す、すみません!」

「い、いえ、構いません」

キャンディを与えたほうの手を反対側の手で包み込むようにして、観月が目を逸らす。
白い頬がほのかに赤く染まっていた。

柳沢と木更津が顔を見合わせる。
アイコンタクトで意思を通じあった二人はニヤニヤ笑いはじめた。

「後でこっそりその指をしゃぶるんだーね、やらしいだーね」

「なっ…しませんよ!そんなこと!」

「ムキになるとこがますます怪しいな。あ、指じゃなくて直にするんだ?」

「ひゅーひゅーだーね!憎いだーね!」

「キミ達はもう何も言うな!」

怒りのあまり敬語ではなくなっている。

「七瀬、何かあったのか?」

観月の叫びを聞きつけて、二つ先のコートにいた裕太が走り寄って来た。
彼は観月と柳沢達を見比べてからなまえに怪訝そうな顔を向けた。

「う……えっと…」

どうやら裕太はペアを組んでいた相手と話していて今の出来事を見ていなかったらしい。

「じ……事故…?」

「はあ?」

何と説明して良いものか悩みながらそう言うと、案の定裕太はますますワケが分からないといった顔で首を傾げた。

「うん、接触事故です」

「お前……大丈夫か?」

心配されてしまった。
勿論ぜんぜん大丈夫じゃない。
その背後では、柳沢達が「余計なお喋りをする余裕があるようだから」と、凍えるような冷たい微笑を浮かべた観月に基礎トレからのやり直しを言い渡されていた。


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