「七海ちゃん、今日は本当にごめん」

練習試合が終わるとすぐに不二が駆け寄ってきて言った。
まだ汗も拭わないまま、慌てて駆けつけたといった風情の不二に、何だか逆に申し訳なくなる。

「大丈夫だから気にしないで」

「でも、」

「それより顔色よくなったね。良かった。お腹もう平気?」

「七海ちゃん…」

「七瀬さん」

不二の言葉を遮るように声をかけてきた人物がいた。
幸村だ。
既に帰り支度を済ませている。

「今日は有り難う。美味しいアップルパイをご馳走さま」

「ううん、こっちこそ有り難う」

「後でメールしていいかな?」

「うん。私もレシピ送るね」

七海の傍らで幸村と不二の視線がぶつかりあう。
それは宣戦布告であり、たった今高らかに試合開始のゴングが鳴り響いたのだが、生憎七海はさっぱり気がつかなかった。


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