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「何だか今日は大人しいね」

離れになっている客室に通され、机を挟んで向かい合わせに座ると、雲雀が言った。

「だって、こんな高そうな所……」

「もしかして代金の心配?だったら心配いらないよ。今日は僕が払う」

「えっ、いくらなんでも悪いよ、そんな!」

「彼氏が彼女に食事を奢ることの何が悪いの?」

「それは……でも、恭弥くんのほうが年下だし、まだ学生だし…何だか申し訳ないというか…」

「僕を子供扱いする気かい?」

雲雀はたちまちムッとした顔になった。
そういうところが子供っぽいのだが、指摘する勇気はない。

「大体、君は普段からおかしな事を気にし過ぎなんだ。年齢差なんて問題じゃないだろ」

「問題だよ。だって恭弥くんが25歳になったら私は三十路になっちゃうんだよ?」

「だから何?僕は君が幾つになったって君が好きだよ。皺くちゃのおばあさんになってもそれは変わらない。僕が側にいて欲しいと思うのは君だけだ。
君は余計な心配なんてせずにただ僕の側にいればいい。僕の言う通りにすればいいんだよ。解ったかい?」

「…ハイ」

真奈は赤くなって俯いた。
これではどっちが年上だかわからない。

雲雀は「迷ってるなら僕が頼むよ」とさっさと注文してしまったが、文句を言う気にはなれなかった。
慣れている雲雀に任せておけば美味しい物が食べられるのは間違いない。
それよりも、廊下へ出る障子とは別にある襖の存在のほうが気になった。

「恭弥くん、こっちは何?」

「開けてみればわかるよ」

それもそうか、と納得して真奈は襖を開いた。

「………」

10畳ぐらいの和室の真ん中には何故か布団が一組敷かれていた。

「そっちは食べ終わったらね」

「…ハイ」


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