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「ふーん……そっか、君が真奈チャンのねぇ……」

白蘭が含みのある笑いを浮かべるのを見て、雲雀の眉が更に吊り上がった。
いつでも攻撃に移れるようにトンファーを構えて白蘭を睨みつける。

「じゃあ、精々頑張らないとね。君達が負けたらその子は僕が貰うから」

「そんな心配はいらないよ。咬み殺されるのはそっちだからね」

「アハハ、威勢がいいねえ」

白蘭はいっそ愉快な気分になった。
なるほど、確かにこの少年は“喰らう側”の人間であるらしい。
この若い肉食獣の前から獲物をかすめとってやるのはさぞかし気分がいいことだろう。

「白蘭様」

面白そうに笑う白蘭に、チェルベッロが温度のない声をかける。

「そろそろ観覧席のほうへ…」

「ああ、ごめんごめん。そうだね、急ごうか」

雲雀の学ランの袖をぎゅっと握って彼の背に隠れていた真奈は、去っていく白蘭の後ろ姿を見てほっと安堵のため息をついた。
雲雀がちらと肩越しに振り返る。

「君は本当に変な男にばかり好かれるね」

「そ…そんなことないですっ」

「今のやり取りを見ておいてどの口がそんな事を言うの。いいから、僕の傍から離れるんじゃないよ」

「ボンゴレ側の観覧席はこちらです。急いで下さい」

チェルベッロの片割れに呼ばれて歩き出した皆の後ろについて、真奈と雲雀も歩いていく。

振り返った白蘭はそんな二人の姿を見て薄く笑った。
純粋にお互いを想いあう、小さな恋人達。
滅茶苦茶にした雲雀の前で真奈を蹂躙してやったら、彼らはどんな顔を見せてくれるだろう。

「ちょっと、びゃくらん!」

幼い声が白蘭を呼ぶ。
憤慨しているらしい様子のブルーベルが腰に手をあて、口をヘの字に曲げて仁王立ちしていた。

「何、あのチビっこ」

「ん?」

自分も見た目十分チビっこでありながら、転送されて消えた真奈がいた辺りを睨みつけながらブルーベルが訴える。

「僕の獲物だよ」

笑顔で答えた白蘭の目は、確かに捕食者のそれだった。



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