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綱吉達がそんな会話をしていた頃、真奈は教室の中にいた。
目の前には体育祭実行委員の男子が立っている。

連れ出された時からなんとなく妙な感じはしていたのだ。
借り物競争の競技内容に問題が発生して、それについて打ち合わせがしたいから、と彼は言った。
でもそれは嘘だと真奈は感じた。
何か別の用事があるのだと。

そしてその予感は、先に立って歩く実行委員の男子が向かった先が人気のない教室だと分かった瞬間確信に変わった。
だから一応警戒していたのだが。


「ごめんな、嘘ついて呼び出したりして。でも、こんな時だからこそ、勢いで言えそうな気がしたっていうか…」

照れ臭そうにしながら話す彼を、真奈はどう反応していいのか困りながら聞いていた。

「俺さ、沢田のこと、ずっと前からいいなって思ってたんだ」

ごくんと喉を鳴らして少年が続ける。

「あのさ…もしよかったら、俺と付き合っ」

「ごめんなさい」

「はやっ!じゃなくて、えと、なんで?」

「なんでって…」

真奈は不思議そうに少年を見た。
本当にわからないのだろうか?
むしろ、こっちが「なんで?」と聞きたいくらいだ。

中肉中背、容姿はたぶん普通。彼は同じクラスではあったものの、普段まったく話したりすることもなく、一緒に行動を取ったりした事もなく、真奈との関わりと言えば本当に『同じクラスの男子』というだけで、特別仲が良いわけではない。
良くも悪くも“クラスメイト”という認識から出る事のない存在だった。

それに、これまで向こうからそれとはっきり分かる形でアプローチを受けた記憶もない。
何しろ会話すらまともにかわした事もないので、自分の何を見て彼は好きになってくれたのだろうかと不思議でならなかった。

絶賛熱烈片想い中の弟と違って恋愛経験が皆無な自分が言うのもなんだが、それはちょっと違うんじゃないだろうかと真奈は思う。
それとも、"いい"と感じただけで交際をしたくなるのが普通なのだろうか?



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