放送室の中では、マイクの音量をゼロの位置まで落とすと同時に真奈がほっと息をついていた。 「あー緊張した…」 「平気平気、初めてにしては上出来だって」 黒川花が、グッジョブと親指を立てて見せる。 「さ、今の内に食べちゃお。時間なくなるからね」 「うん」 昼休みに校内放送を担当する放送委員はリクエスト曲を流す合間に昼食を済ませる必要があるのだ。 今流れている曲が終わり、次の曲が始まる前にはまたナレーションを入れなければならない。 机に広げたお弁当をそれぞれ食べ始めたところで、防音扉の窓ガラスにひょいと笹川京子の顔が現れた。 「お、きたきた」 花が手招きし、京子がドアを開けて入ってくる。 「お疲れさまー。差し入れ持ってきたよ」 「ありがとう、京子ちゃん」 京子はミニバックからブリックパックを取り出すと、花と真奈に一つずつ手渡した。 花は珈琲牛乳、真奈のはイチゴミルクだ。 「あ、そろそろかな。真奈準備して」 曲が終わるところで再び曲名の紹介をし、その後はあらかじめ編集していたアルバムを流しながら三人で食事を済ませた。 珈琲牛乳を飲みながら花が進行表を確認する。 「次は《今日の星占い》か…」 《今日の星占い》とは、毎日一つずつ星座別に性格判断を紹介し、ついでに今日のその星座の運勢をチェック出来るというコーナーだ。 「これ面白いよね。早く魚座の番にならないかなぁ」 「ああ、京子は雑誌の星占いは必ずチェックしてるもんねえ」 アハハと笑って、花は真奈に小さなメモを手渡す。 「私が合図したらこれ読み上げて。話ふったら普通に会話する感じでいいから適当に調子合わせてくれる?」 「うん。わかった」 「じゃ、始めるよ」 |