風間さんはボーダーと呼ばれる国境警備隊の中でも特に機動力に優れた隊員で構成された隠密部隊の隊長さんなのだそうだ。
ちなみに、どれくらい強いのか聞いてみたら、個人戦で二位だと言われた。凄い。

「トリオン器官?」

「……そこからか」

風間さんは忙しい。
こうして逢って話せる機会は限られている。だから、風間さんのことを少しでも知りたくて、つい色々と質問してしまうのだけど、風間さんは特に嫌がる様子もなく律義に答えてくれる。
こう見えて意外と面倒見が良いのかもしれない。

「トリオン器官とは、心臓の横にある器官のことで、そこでトリオンが生成される。トリオンの量は生まれながらに決まっていて、トリオン量が多いほどトリオン体になって戦う時に有利となる」

「なるほど」

トリオンが無くなると強制的に生身に戻ってしまうらしい。だから、大抵の場合はその前にベイルアウトして自ら換装を解くのだとか。
限られたトリオン量をいかに使うか、戦略的判断が求められるわけですね。

「飲み込みが早いな。ランク戦に参加してみるか?」

「そんな、さすがに無理ですよ」

「冗談だ」

「ですよね!」

説明を終えた風間さんは、運んできたカツカレーを食べはじめた。
私も温かい内に食べようと、同じくカツカレーをせっせと食べ始める。

「あ、美味しい」

「そうか」

風間さんが僅かに笑みを覗かせた。
赤い目に真っ直ぐ見据えられてドキッとする。

「口に合って良かった」

突然異世界に召還された私のことを彼なりに心配してくれていたのだと思う。
不器用なこの人らしい、素の優しさが垣間見えた瞬間だった。


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