大学からの帰り道、突然異世界に召還された。
何を言っているかわからないと思うが、私もよく事態を理解出来ていない。

なんでも、魔物が増えてくると異世界から聖女を召還することになっているそうで、今回の儀式で私が選ばれたらしい。

聖女として召還された際に私には特別な力が与えられていた。
傷や病を癒す治癒能力と、魔物を浄化する聖なる力だ。

「そのお力で、どうかこの国をお救い下さい」

国王様をはじめとする国の重鎮の方々に頭を下げて請われては、断るわけにもいかない。
何しろこの世界には他に行けるところも頼れる人もいないのだ。
やるしかない。

私と同じなようにかつて異世界から召還された勇者が興した国で、初代国王となった勇者の故郷の風習が色濃く残っていると言われているこの国は、様々な面で日本に似ていた。

だからだろうか。

この世界から元の世界に戻れた者はいないと宣告されても、それほどショックを受けずにいられたのは。


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