「お迎えに上がりましたよ、なまえさん」 「赤屍さん!」 突然、背後の景色が真っ二つに斬り裂かれたと思うと、もはやすっかり見慣れてしまった黒衣の運び屋が現れた。 次元を斬って登場するなんて、さすが赤屍さん。 「異世界に逃げ込むなど、貴女はやはり面白い方だ」 「ひえっ」 クスクス笑う赤屍さんが怖い。 そもそも自分の意思で来たわけじゃないのに。 「さあ、帰りましょう」 赤屍さんに引き寄せられ、片腕で抱き上げられる。 「聖女様をお助けしろ!」 兵士さん達がわっと群がって来たけれど、赤屍さんの赤い剣の一閃であっという間に倒されてしまった。 その間に赤屍さんは次元の斬れ目にするりと入り込む。と同時に斬れ目は跡形もなく消滅した。 「私からは逃げられませんよ」 赤屍さんが私を見て含み笑う。 だから逃げたわけじゃないんですってば。 でも、元の世界に帰って来られて本当に良かった。本当に。 あのまま異世界で暮らしていたら、仲良くなった誰かに絆されて永住してしまっていたかもしれない。 「私という者がありながら、浮気だなどと酷い方ですね」 「心を読まないで下さい!」 私は赤屍さんから逃げ出した。 その後を赤屍さんがゆっくりと追いかけてくる。 「いやー!来ないでえっ!」 やっぱり永住してしまっていたほうが良かったかもしれない。 |