「私の勝ちですね」 勝ったのは赤屍蔵人だった。 なんということだろう。 決して勝ってはいけない男が勝ってしまった。 最悪の事態である。 なまえは急いで逃げ出そうとしたが、時既に遅く、赤屍の腕の中に捕らえられてしまった。 「貴女は私のものですよ、なまえさん」 「ひっ」 怯えるなまえを宥めるように、赤屍がその背中を優しく撫でる。 なまえはと言うと、恐怖のあまり震えることしか出来ない。 赤屍が小さく笑う。 そうして彼は、その場にいる敗者達に見せつけるようになまえに口付けた。 「いかがです?皆さん。愛しい彼女を奪われたご気分は」 「貴様……!」 ブワッと殺気を立ち上らせながら、男達がそれぞれの得物を手に戦闘態勢に入る。 赤屍もなまえを片腕に抱きながら、片手で剣を取り出してみせた。 一斉に襲いかかってくる男達の攻撃を流し、あるいは受け止め、次々と屠っていく。 「楽しいですねぇ、実に楽しい」 なまえはと言うと、やはり恐怖のあまり震えることしか出来ない。 赤屍だけがただ一人、この修羅場を満喫していた。 |