「いい加減にしろ!」

売店に行くために病室を出ると、デイルームで入院患者の一人が例の男の子に怒っているのが見えた。
怒っているほうの少年は、確か事故で入院しているという中学生だ。
制服を着た友達が面会に来て話している姿を見た事がある。

「そんな風に悪い事ばかりしてるとブラック・サンタが来るぞ」

なまえは思わずよろけてしまった。

ブラック・サンタというのは、悪い子のところに来ると言われている黒いサンタクロースだ。
良い子の所には普通のサンタがお菓子や玩具を持ってきてくれるが、悪い子の所にはブラック・サンタが夜忍び込んできて、ベッドの上に動物の血や内蔵をぶちまけたり、普通のサンタがプレゼントを入れるために持ち歩いているような大きな白い袋の中にその子を突っ込んで拐っていくのだとか。

そんな話で反省するわけが──いや、でも、案外小さい男の子にはそういった脅しのほうが効くかもしれない。

「はあ〜? お前頭おかしいんじゃねーの?ばーーーーか!」

全然効かなかった。
聞いているだけでムカつく言い方で中学生を嘲笑った男の子は、彼の向こう脛を蹴り飛ばして、笑いながら走って行った。
本当にとんでもないクソガキだ。


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