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その日、ボンゴレの総本部の古城には大勢のマフィア関係者が集まっていた。

この城の庭園は“水”を中心とした伝統的なイタリア式庭園とは異なり、どちらかといえばフランスのそれに近い。

シンメトリーをなすように配置された花壇の一つの前に佇むザンザスは、城のある方角へ鋭い視線を投げかけていた。

その表情は険しく、暗赤色の双眸には目の前で咲き乱れている美しい花々が映ることもない。
彼の目は広大な庭園を飛び越えてこのパーティーの中心人物がいるはずの場所へと向けられていた。

今頃は人々に囲まれているだろうその人物は、彼の父親であるボンゴレ9代目・ティモッテオ。
最も古い歴史を持つ偉大で強大なボンゴレ・ファミリーのボスだ。

そしてザンザスがこの世で一番憎んでいる男でもあった。


(──クソジジイが……よくも俺を裏切りやがったな…!)

噛み締めた奥歯がぎしりと音を立てる。
激しい怒りに全身の血が沸き立つようだった。

父と慕い、偉大なるボスと慕っていた人物に騙されていたのだと知ったのは、数ヵ月前のことだ。

ザンザスは、自分は9代目である父の唯一の息子にして次代のボス──ボンゴレ10代目になる男なのだと信じていた。
しかし彼は9代目の実子ではなかったのだ。

血の繋がらない養子。
しかも、ボンゴレの血なくしては後継者として認められぬ掟があるのだという。

それらの真実を知った時、ザンザスは怒り狂った。
父は、9代目は、自分を後継者にするつもりなどなかったのだ。
裏切られたと思った。
何もかもまやかしだったのだ。

その怒りのままに9代目を手にかけてやろうかとさえ思った。
だが、幸か不幸か、人並み以上の頭脳をも持ち合わせていたお陰で、ザンザスはその衝動を抑えこむことにしたのだった。

今はまだその時ではない。
いずれ必ずやってくるその日の為に、今は下地を造り、備えるのだ、と。



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