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※美容師パロ



誰にでも行きつけの美容室が一つはあるのではないだろうか。

自分にあった店を探してあちこち渡り歩く場合を除き、一度行ってみて良かったら次もそこへ行くということが多いはずだ。
少なくとも真奈はそうだった。

年頃の少女らしく、それなりに身だしなみには気を遣っている。
自分でカットするよりはやはりきちんとプロに整えて貰うほうが良い。

そういうわけで、真奈はお気に入りの美容室『Varia』を訪れていた。

入口のドアを開くと直ぐに、「いらっしゃいませえぇん」と語尾にハートマーク付がついた、男性にしては微妙に高い声に迎えられる。
受け付け兼メイク担当のルッスーリアだ。

「あら、真奈ちゃんじゃない。久しぶりねぇ」

気さくに声をかけてくれた彼は、自称・心はオンナの、カラフルなモヒカン頭が特徴的な筋骨隆々とした長身の男性だった。
オネエ言葉から分かる通り、彼の性の対象は男性であり、女性には冷ややかな対応をとるルッスーリアではあるが、真奈は何故か彼に気に入られているらしく、初回の時から今までずっと冷遇されたことはない。


「こんにちは。予約してないですけど、大丈夫ですか?」

「ええ勿論よ。でもごめんなさいね、今日はボスは出張で留守なの」

「え…そうなんですか?」

ボスというのは、この美容室の店長のザンザスのことだ。
真奈は初めて来店した時から彼に担当して貰っているのである。
と言っても、真奈が彼を指名したわけではなく、なんの気まぐれかザンザスが自ら担当を買ってでてくれているのだった。

「他のスタッフでも良ければ、直ぐに案内出来るけど」

どうする?と聞かれ、真奈は「お願いします」と頷いた。
残念だが仕方がない。
そもそも、ザンザスが自分のような小娘をわざわざ担当してくれていたのが奇跡のようなものなのだ。

「今日もシャンプーとカットでいいのかしら?」

「はい、毛先を揃えるくらいでお願いします」

「任せてちょうだい。スクーー、真奈ちゃんのシャンプーお願〜い!」

「了解だぁ」

声を張り上げて呼んだルッスーリアよりも大きな声が奥から答える。
美しい銀髪をなびかせて、スクアーロが大股に歩いてきた。

「う"お"ぉい、こっちだぁ。ついて来い」

「はーい」

「今日はクソボスがいなくて残念だったなぁ」

「出張なんですよね、残念だけど仕方ないです」

真奈は大人しくスクアーロの後ろについていった。

彼は綺麗な顔立ちと抜群のスタイルの持ち主なのだが、いかんせん店長のザンザスに負けず劣らず凶暴で傲慢な性格である為、客の評判はくっきり二分している。
特に女性客は、彼にめろめろになるか怯えて怖がるかのどちらかだ。

シャンプー台の前にやってくると、スクアーロはタオルをバサリと広げて真奈に椅子に座るよう促した。
服が濡れないように座った真奈の膝にタオルケットをかけ、手早く襟元に白いタオルを巻いていく。

仰向けになった顔にガーゼを乗せられた真奈は目を閉じた。
毎回思うのだが、これでガーゼの隙間からスタッフをガン見したらさぞ怖いだろう。
やらないけど。



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