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その日、ヴァリアーの幹部で唯一任務に出ていたベルフェゴールが帰宅したのは、ちょうど厨房が夕食の支度で慌ただしくなりはじめた頃だった。

「たっだいまーー」

自室に戻らず、真っ直ぐ談話室へとやってきたベルは、いつものお気に入りの寝椅子に向かって歩きながらラックから新聞を取り上げた。

「おっ、今朝のヤツもう載ってんじゃん」

「やあねえ、ベルちゃんたら。その椅子一点物のアンティークなんだから汚さないでよぉ」

コートを返り血で濡らしたままのベルを見てルッスーリアが眉をしかめる。
それを黙殺して寝椅子に仰向けになったベルは顔の前で新聞を広げた。

「なになに……『彼に恨みを持つ人間はあまりにも多く、犯人特定は困難をきわめるだろう』だってさ。うしし、あの判事、マジで嫌われ者だったんだな〜」

「汚職事件の奴かい?相当ヤバい事を色々して、あちこちで目障りに思われていたみたいだから、僕らが頼まれなくても誰かがやっただろうね」

ぴょん、と隣の椅子に飛び乗ったマーモンが相づちを打つ。

「まあ、これで市民は安心、ボンゴレも安泰、ベルも懐が暖かくなったし、良かったんじゃない」

再びバタン、と談話室のドアが開き、今度はレヴィの陰欝な顔が覗いた。

「ルッスーリアはいるか」

「はいはい、ここよん」

直ぐに立ち上がったルッスーリアがドアに向かい、レヴィとボソボソと何か話しあう。
そのまま彼はレヴィとともに部屋から出ていった。

「なに、今日何かあんの? そういや真奈もいねーし」

「跳ね馬が来てるんだよ」

日本製のいちごミルクをすすりながらマーモンがベルに教える。
真奈の好物でもあるそれは、彼女が滞在する時いつでも飲めるように、今やこの城の貯蔵庫に必ずストックされるようになった品だ。

「ボスに相談したい事があるんだってさ。どんな内容か知らないけど、ボスは跳ね馬から相談料をとるべきだね」

「うししっ、どっかのがめつい赤ん坊みたいにかよ?」

「うるさいなあ。人を守銭奴呼ばわりするくらいだから、さっさとツケを払ってくれるんだろうね、ベル」

「あーー……うん、まあ、その話はまた今度ってことで。あーあ、真奈早く戻って来ねーかなー」

ベルは畳んだ新聞をぽいと投げ出し、ついでに食事の時間までそのまま一眠りすることにした。



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