その重厚な扉を開く事は、ヴァリアーの幹部の一人であるマーモンでさえ緊張した。 何しろ、扉の向こうはザンザスの寝室なのだ。 手前の私室までならそれほど問題はない。 勿論、寝室に比べればという意味でだが。 この先は完全にプライベートな空間である上に、時刻が時刻なので、最悪の事態も想定しなければならない。 だからまずはそっと声をかけた。 相手は既に気配で気付いているはずだ。 「…ボス」 「入れ」 意外にもすぐに入室を許可する声が返ってきた。 ボスの気が変わらない内にと、マーモンは素早く室内に身を滑り込ませる。 手前の私室と同じく重厚な家具で揃えられた室内は暗い。 だが、僅かな明るさで行動することに慣れているマーモンには問題にならなかった。 灯りはベッドサイドのランプのみ。 それもかなり光量が抑えられている。 その傍らにザンザスが立っていた。 下は既に隊服に合わせて常用しているレザーパンツを穿き終えている。 素肌の上にシャツを着ながら、ザンザスは目だけ動かしてマーモンを見た 「ジジイから連絡があったか」 「! うん」 恐るべき勘の良さ。 本当にボンゴレの血統ではないのかと疑うほどに、ザンザスは勘が鋭い。 「………ん…」 マーモンがごくりと喉を鳴らして用件を伝えようとした時、ザンザスの背後のベッドの膨らみがもぞりと動いた。 寝返りをうったのだ。 こちらに向きを変えたお陰で、まだ少女らしさの残るあどけない真奈の寝顔がマーモンにも見えた。 「早く用件を言え」 ザンザスにギロリと睨まれて凄まれたマーモンは、ぴゃっと空中で飛び上がると急いで用件を伝えた。 勿論、ベッドで眠るボスの大切な恋人を起こさないように小さな声で。 これだからこの部屋に入るのは緊張するのだ。 |