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「おはよう、ザンザス」

「…ああ」

傍らの真奈の腿のあたりを撫でながら、低い声で気だるげに返事をかえす。
すべすべしたその肌は、昨夜はしっとりと汗で湿って火照っていた。
ザンザスがそうさせたのだ。

すでに男性として完成された肉体を持つザンザスの傍らで、あどけない様子で「うーん」と伸びをしている真奈はひどく幼げで、それでいて思わず息を飲むほどの清楚な色香を放って見えた。
未だ熟しきっていない瑞々しい果実のようだと思う。

うまそうなそれに再び食らいつこうとすると、「だめ」とぺちりと手で押さえて邪魔された。

「ご飯食べてからね」

甘いキスひとつでお預けというわけだ。

ザンザスは手近な新聞を一つ取ると、裸の胸に真奈をすがらせたままそれを広げた。

その新聞が『ウォールストリート・ジャーナル』であるということだけは真奈にも分かった。
驚異的なスピードでイタリア語を修得しつつある真奈だったが、残念ながら英語のほうはさっぱりだ。
学校の英語の授業では一応平均ぐらいの成績は修めているが、はっきり言ってまだまだ実用には程遠い。

とは言え、英語も出来たほうがいいのかなどとザンザスに尋ねる愚はおかさなかった。
世界の主要国で公用語として通じる言語なのだから、そりゃ出来たほうがいいに決まっている。
むしろ、七ヶ国語以上をマスターしている人間にしてみれば、英語くらいは理解出来て当然という認識に違いない。

そうしている内にノックの音がして、ザンザスが入室を許可すると、食事の乗ったワゴンが運ばれてきた。

「食べたら一緒にシャワー浴びようね」

それはもちろん、本日の第一ラウンドの無邪気なお誘いなのだった。



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