突然だが、今、某国の雪山に来ている。 見渡す限り一面の銀世界だ。 ついはしゃいでしまって、うっかり新雪の中に飛び込んでしまった。 「ベスター」 冷静な声に命じられたライガーが雪に埋まった少女をすくい上げる。 「ありがとう、ベスター」 なめらかな毛並みを撫でると、ライガーは気持ち良さそうに目を細め、ガウ、と低く鳴いた。 そのまま戯れようとしたのだが、後ろから伸びてきた腕にひょいと抱き上げられてしまい、ライガーを見下ろす形になる。 「ザンザス」 「冷てえ」 低く唸って文句を言うと、ザンザスは彼女を抱えたまま室内に戻った。 暖炉の前まで連れて行き、そこに腰を下ろす。 元々体温が高い男の大きな身体に包み込まれるようにして抱かれ、暖炉の炎にあたっているとすぐに冷えた身体は温まった。 「あったかい…」 逞しい胸に身をすり寄せると、顎を掴まれて後ろを振り向かされる。 少し苦しい態勢でのキスはとても甘くて、全身を蕩けさせた。 「真奈」 「ん」 ここに連れて来られたのは誕生日のお祝いをするため、なのだと思う。 本人はそれとはっきり言わないが間違いない。 ご馳走にケーキ、暖炉の明かりに手をかざせば、眠っている間に指にはめられていたリングが淡く輝く。 「ありがとうザンザス」 「お前が礼を言ってどうする」 ハッと笑われたが、ううんと首を振った。 「だって嬉しかったから。ここに連れてきてくれて、お祝いしてくれて…」 不器用な男の彼なりの愛情表現が嬉しい。 「ずっと一緒にいてね。おじいちゃんとおばあちゃんになっても、ずっと」 「当たり前だ。俺が逃がすとでも思ってるのか」 腕の拘束が強くなる。 逃がさない、と言わんばかりの態度が嬉しかった。 ───── HappyBirthday to you |