今日はバレンタイン。 イタリアでは恋人達の日と呼ばれ、恋人同士で贈り物をし合うのだそうだ。 ザンザスからは薔薇の花束と、紅い石がヘッドで煌めく高そうなネックレス。 真奈からは、手作りのトルタ・カプレーゼを贈った。 外はサクッ、中はしっとりの、ナッツがたっぷり入ったチョコレートケーキだ。 「ザンザス、私も」 ミネラルウォーターのボトルを煽っているザンザスに言えば、すぐに真奈の上に顔を伏せて口移しで飲ませてくれた。 唇を重ねると、真奈のほうから進んで舌先を絡ませる。 恐らく無意識の行為なのだろう。 真奈は濡れた瞳に彼を映して、繰り返しその黒髪を撫でている。 甘やかすように、愛おしむように。 「だいすき」 濡れた唇を親指で拭われ、そんな些細な仕草にまで愛情を感じてときめいてしまう。 互いに生まれたままの姿。 先ほどまでザンザスを受け入れていた場所は未だに熱く潤んでいて、まだ彼が入っているような錯覚を覚える。 「チョコレート美味しかった?」 「悪くはなかった」 「全部食べてくれてありがとう」 「フン…どちらかと言えば、こっちのほうが美味かったがな」 熱い男の大きな手で身体を撫でられる。 真奈は、ふふと笑ってザンザスの逞しい胸板に頬をすり寄せた。 「食べられちゃった」 これでもう何度目の逢瀬になるだろう。 いつも突然現れては、攫うように連れて行かれてしまうのだから、まだ学生の身としては困るのだが、これが彼なりの愛情表現だとわかっているので、不満に思うことはなかった。 ザンザスは今度はグラスに注いだウイスキーを飲みながら、真奈の太ももに手を這わせ、ゆったりとした動きで撫でている。 そっちがその気なら、と。 真奈もザンザスの身体に手を這わせる。 太い首。 髪につけた羽飾りのエクステが垂れている、がっしりとした肩から胸にかけてのライン。 もしかすると自分より胸囲がありそうな、逞しい胸板。 綺麗に割れた腹筋。 それらを順番に手でなぞっていくと、腰に移動したあたりで手首を掴まれた。 「くすぐってぇ」 ということらしい。 触り方が悪かったようだ。 「その気にさせたいなら、もっと色っぽく誘ってみせろ」 「誘わないよ!」 慌ててシーツを胸まで引き上げると、鼻で笑われた。 真奈としては、激しく情熱的な行為が終わった後に、こうしてまったりと触れ合って過ごす時間が好きなだけなのだ。 決しておねだりしているわけではない。 「ねだり方は教えてやっただろう」 意地悪く笑ったザンザスの身体の上に引き上げられる。 この男の身体はどこもかしこも火傷してしまいそうに熱い。 でも、その熱さえも愛おしく感じるのだから、困ったものである。 「真奈」 仕方ないなあと、真奈は微笑んだ。 この暴君の扱いにも大分慣れてきた。 「今日はバレンタインだから、特別ね」 そう言って、真奈はザンザスの胸板に手をついて顔を上げると、精悍な顔立ちをした年上の恋人にキスをしたのだった。 |