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そして、翌々日。

予定通りイタリア入りした真奈は、久しぶりに会った父親を見て驚いた。
普段家で目にする姿とはまるで別人だ。
ピシリとスーツを着こなしている父を見上げて瞳を輝かせる。

「お父さん、カッコいい!」

「そーかぁ?もっと誉めていいぞ」

途端にデレデレとやに下がった家光を見てディーノは苦笑した。
かつて若獅子と恐れられた門外顧問も可愛い娘の前では形なしのようだ。

「ディーノさん、こんにちは」

「よぉ」と気安い挨拶を返したディーノが腕を広げたので、真奈はちょっと恥ずかしそうにしながらも彼と抱擁を交わした。

「元気そうだなぁ、また綺麗になったんじゃないか?」

真奈をぎゅうぎゅう抱きしめてディーノが笑う。

「奈々と俺の娘なんだから当たり前だ。あと数年もしたらもっと美人になるぜ」

「ハハ、そいつは楽しみだ!」

一見するといつも通りの会話。
しかし、男二人の間で交わされるやり取りに真奈は妙な引っかかりを覚えた。
まるで、無理に“普段通り”を装おうとしているみたいな気がする。
隠し事をしているのだと直ぐにピンときた。
こんな時超直感があると便利だ。

チラリと廊下の奥に視線を流したディーノが不意に表情を改めた。
「ザンザスが来てる」と低く家光に教える。
それを聞いた家光も笑みを消した。

「ザンザスが?9代目に用事か?」

「さあな…だが、気をつけるにこしたことはないだろ」

「ザンザス?ザンザスがどうかしたの?」

真奈が尋ねると、ディーノと家光は顔を見合わせた。
話そうかどうしようか迷っている顔だ。
じっと見つめていると、先に家光が折れた。

「こんな事を今お前に言うべきじゃないかもしれんが……」

家光はガシガシと頭を掻いて少し言い淀んだあと、ボンゴレの内部で起こっている水面下の対立について話してくれた。

歴代ボスきっての穏健派と名高いボンゴレ9代目。
しかし、いかに神の采配と謳われる手腕の持ち主であろうとも、なるべく温情をかけようとする9代目のやり方は生温い、マフィアらしくないと感じる者達も少数ながら存在していた。
彼らは、歴代ボスの中でも武闘派と呼ばれるボスこそボンゴレのボスに相応しいと信じている節があり、だからこそ次期10代目としてザンザスを強く支持していたのだそうだ。
リング争奪戦の結果、綱吉が10代目に決定したにも関わらず、そうした者達の中には相変わらずザンザスを支持し続けている者もいるのだという。

「だからと言って、連中の全部がザンザスを熱烈に信望しているわけじゃない。9代目やツナと比較してザンザスがボスになったほうが自分達にとって都合がいいと判断したんだろうさ」

水清ければ魚住まず。
自警団としてボンゴレを興した初代の志を継ぎ原点回帰を目指す綱吉がボスになれば、更に反発する者が増えるだろうことは目に見えている。
9代目が目を光らせている今でさえこれなのだ。
代替わりの際の内部抗争は避けられないと思うと、家光は今から頭が痛かった。



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