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その間にもまた玩具の銃の発射音が響き、周囲の見物客の間から残念そうな声が漏れるのが聞こえてきた。
男の子が狙っていたのはゲームのパッケージだが、どう考えてもあれは無理だろう。

「ハッ、下手くそが」

「しょうがないよ。景品は完全に棚から落ちないと貰えないし、結構難しいんだよ。リボーンは一発で何個も同時に景品を落としてたけど、普通の人はそんなこと出来ないもん」

くだらねぇと言いたげな表情で聞いていたザンザスは、その一言でピクリと眉を動かした。

「ザンザス?」

突然向きを変えたザンザスに慌ててついていく。

「え?やるの?射的」

「てめえのレベルに合わせて遊んでやると言ってんだ。文句あるのか」

「…ううん」

絶対言い訳だ。
リボーンに対抗意識を燃やしたに違いない。

しかし、この男の生い立ちを考えると、童心にかえって子供の遊びに参加するというのは良いことなのかもしれないと真奈は思った。

9代目に引き取られてからは子供らしい遊びなんて出来なかっただろうし(そのぶん悪い遊びはたっぷり経験していそうだが)、青春時代から二十代前半までの一番貴重な時期を8年間も氷漬けにされて過ごしたのだから。

失った時間は取り戻せないけれど、せめて気分だけでも楽しんで貰いたい。

射的の屋台に近付くにつれ、屋台の横に置かれた発電機のエンジン音が大きくなった。
明るく輝く電灯に羽虫が群がっている。

「へい、らっしゃい!」

威勢良く掛け声をかけてからこちらを向いた店主は、ザンザスの容貌を見るなり顔をひきつらせたが、あえて真奈に向かって対応することに決めたらしく、彼女のほうにライフルを一丁押しやった。

「弾5発で五百円だよ」

言い終わる前にカウンターの上に五百円玉が無造作に投げ出される。
ザンザスだ。

「弾はこれか」

「うん、そう。銃口のところに詰めるの」

コルク弾が入った小皿を横目で見たザンザスは、真奈からライフルを取り上げると、銃口に自分の指をあててトリガーを引き、空撃ちした。

そうして、カウンターの上にあるライフルを代わる代わる手に取っては同じ事を繰り返す。
どうやら音と感触で何かを確かめているらしい。

「え、ちょっと、お客さんっ──!?」

両手にそれぞれライフルを持ちニ丁拳銃のように同時に構えたザンザスを見て、店主がギョッとした顔をする。
先ほどの高校生の男の子達も、周りのギャラリーも、興味津々といった様子でザンザスを見守っていた。



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