「悪気があってやったわけじゃないんだ。初対面の時に態度が悪かったのも照れ隠しで、好きな子ほどいじめてからかいたくなる、っていうやつだったんだと思う」 部長という立場もあって、仲間であり友人でもある部員をフォローしようとしていたんだろう。 でも、その時の私には責められているように感じられて、すごくショックだった。 誰よりも仲が良かったと思っていたのは勘違いだったんだ。 私じゃなくチームメイトを信じるんだ。 チームメイトを庇って私を責めるんだ。 そう思うと、もうダメだった。 堪えに堪えてきたものが一気に溢れ出してしまった。 涙が溢れ出るのと同時に私は走り出していた。 「なまえ!」 後ろから私を呼ぶ声が聞こえてくる。 でも、足を止めるわけにはいかない。 走って、走って。 学校から飛び出したところで、一旦息をつくために立ち止まる。 ポケットから携帯を取り出して一番の親友に電話をかけた。 『もしもし?』 「あの、あのね、今…」 『ごめん。今友達が来てて大事な相談に乗ってる最中なんだ。後でもいい?』 私は黙って電話を切った。 そして……そして、 そうだ。 ぼんやりしたまま歩いて交差点にさしかかった時、物凄いスピードで真っ直ぐ向かって来るトラックが見えたんだった。 親友だと思っていた子には、他に一番仲良しの子がいた。 大好きな彼にとって、私はチームメイト以下の存在だった。 私が特別大切に想う人達にとって、私は特別な存在ではなかった。 二番目以下の存在でしかなかった。 だからこんな形で終わる事になっても全く未練はなかった。 もしも『次』が存在するとしたら その時は、どうか誰かの一番になれますように |