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タラップを降りた聖羅の視界に飛込む、青い海原と抜けるような青空。
南国特有の乾いた空気を胸一杯に吸い込んだ聖羅はたまらず走り出した。


「赤屍さん!早く早く!!」

「クス…そんなに急がなくても海は逃げませんよ」


はしゃぐ聖羅に瞳を細める赤屍はいつもの黒衣ではなく、キャミソールにサブリナパンツの恋人に合わせて、白い開襟シャツに薄地のスラックスという出立ち。
南国の風に吹かれた黒髪を掻き上げて微笑む彼の姿にいかにもリゾートといた風情を感じて、聖羅は早くも来て良かったと嬉しく思ったのだった。


「さて…まずはホテルに荷物を置きにいきましょうか」


自分の周りをちょろちょろ歩いては、珍しい土産等に歓声をあげる聖羅に口許を緩めながら、手続きを済ませた赤屍が二人分のトランクを持ち上げる。


「チェックインを済ませて荷物を置いたら、いくらでもおつきあいしますから…ね?」

「はーい」


空港の直ぐ側に広がる海を名残惜しげに見つめる聖羅を宥めて、赤屍はタクシーに乗り込んだ。
数分シーサイドラインを走り、ついた先は海辺に突き出した桟橋。


「今夜泊まるホテルは小さな島にありましてね。ここから船で行くのですよ」


キョトンと見上げる聖羅に、タクシーから降りながら赤屍が説明する。


「島全体がホテルの所有地で、一面プライベートビーチのようなものですから、人混みを気にせず楽しめるはずです」


嬉しそうに笑う聖羅に軽く口付けて、赤屍は待機していた送迎船に乗り込み、海原に浮かぶ小島へと向かった。

青い海原と白い砂浜に囲まれた、小さな島のリゾートホテル。
ペンションで良くあるように、小さなコテージが砂浜に点々と建っているのを指さして、「あそこに泊まるのですよ」と赤屍は説明してくれた。

早速フロントで手続きを済ませて、部屋へ向かう。
アジアンテイストの調度品で統一されたそのコテージの中はとても雰囲気が良く、聖羅は一目で気に入った。


「さて…まずはどうしましょうか?」


荷物を置いて、少し落ち着いたところで赤屍が聖羅に微笑みかける。


「えーと……」


マリンスポーツも良いが、出来れば少しゆっくりしたい気もする。
何よりも、赤屍とこうして南国で過ごすという事がまだ信じられないでいるのだ。
じっくり実感する為にも、落ち着いて彼の存在を感じていたいと思う。


「あの…少しゆっくりしても良いですか?」

「疲れてしまいましたか?」


気遣う声に、そうじゃなくと首を振る。
顔が熱いのは南国の熱気のせいか。


「赤屍さんと、こうしてここにいるんだって、まだ信じられなくて…」


火照った頬を、ひんやりした手が包み込んだ。
大きなベッドを背後に、赤屍の端正な顔が優しい微笑を浮かべている。


「構いませんよ。聖羅さんとゆっくり愛しあって過ごす為にここに来たのですからね」


抱きしめてくる大きな身体は、気のせいか甘い果実のような香りがした。


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