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夜が明ける。

黎明の光に輝く家々の屋根、その遥か向こうを見晴るかす。

殆どの家ではまだ人々は寝静まっているが、早起きなのか不眠症なのか、あるいは今の聖羅のように長い夢から覚めたばかりなのか、ちらほらとカーテンの引き開けられた窓も見える。

生まれたばかりの太陽はまだ弱々しかったが、濃密な夢の深く昏い淵から戻ったばかりの聖羅を安心させるに余りあるだけの温かさをその光は持っていた。

あまりにも長い夢だったから、まだ夢の中にいるのかもしれないとさえ思ってしまう。

それらの夢は、時に美しく、時に残酷で、時々そのまま目覚めないのではないかと恐ろしくなるほどだった。

でも、もう大丈夫だ。
朝が来たから。
夜は明け、夢は終わった。
これからまた、慌ただしい現実が始まる。

ほっと息をついた聖羅の身体を、背後から伸びて来た腕が抱きしめた。


「お早うございます、聖羅さん」


ギクリと強張る聖羅の身体をすっぽりと腕の中におさめて、男は笑み混じりに耳元で囁く。


「逃がさない──そう言ったでしょう?」


この夢は永遠に覚めない


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