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金曜日。
今週最後の仕事を終えた聖羅は、別荘へ持っていく荷物をバッグに入れ、荷造りをしていた。
連泊になるので、服などの身の回りの品だけでも結構な量になる。
しかも、それに加えてお祝い用のあれこれを持って行かなければならない。
勿論、誕生日プレゼントもだ。

入れたり出したりして上手く収まるよう調節していると、コンコン、とノックの音が室内に響いた。

「終わりましたか?」

「ま、まだ、もうちょっと!」

あわあわと一際かさばる荷物をしまいこんだのとほぼ同時にドアが開かれる。
現れた赤屍は、いつものスーツにコートという格好だった。
これから仕事なのだ。

「荷造りしたら廊下に出しておいて下さい。私が後で車に積みますから」

「は、はい」

涼しげな視線が荷造り中のバッグに注がれ、また聖羅へと戻る。
その表情からは、明らかに多い荷物の量を疑問に思っている様子は見受けられなかった。
でもやっぱりドキドキしてしまう。

「お仕事、何時頃に終わりそうですか?」

「そうですね…恐らく夜明けまではかからないでしょう。大丈夫、出発時間までには余裕で間に合いますよ」

「でも、やっぱりお仕事終わって直ぐに長時間運転させるのは申し訳ないです。私が──」

「ダメです」

自分が運転する、という提案は、皆まで言わせず却下された。

「貴女だって今日まで仕事だったのですから疲れているでしょう。私が運転します」

「でも…」

「それに、体力を温存しておかないと、ご自分が困る事になりますよ」

言葉に詰まった聖羅を見て赤屍がクスリと笑う。
体力を浪費するナニをさせるつもりなのかと聞き返す必要はなかった。

「車は私が運転します。いいですね」

「…………はい」

「良い子だ。今日はそのまま大人しくしていなさい。私が帰ってくるまで、ね」

す、とドアから身を引いて向きを変えた赤屍を追って聖羅も立ち上がる。
玄関まで見送ろうと思ったのだ。

赤屍の長身の後ろに続いて玄関までついていくと、彼は帽子を片手に振り返り、優雅に身を屈めた。

「それでは行ってきます」

「行ってらっしゃい。気をつけて」

ちゅ、とキスをして微笑む。
新婚夫婦みたいなやり取りで照れ臭いが、同時にちょっと胸がときめいたりもする。
長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳が甘く細められた。

「もう一度」

「えええ…」

恥ずかしい。
赤くなりながらも再び唇を寄せると、腰を抱かれてぐいと引き寄せられた。

「んっ、んっんーー!!」

行ってらっしゃいのキスにしては濃厚すぎる口付けに、あっという間に息が上がる。
情熱的に絡められる舌に腰が砕けそうになる。
──火がついてしまう。

「ご馳走様でした。行ってきます」

くったりとなった聖羅をそっと床に下ろし、赤屍は艶やかな笑みを残して玄関から出て行った。
バタン、とドアが閉まった後も、へたりこんだまま立ち上がれない。

「うう…信じられない……赤屍さんの馬鹿っ…」

調教されたお陰ですっかり快楽の予感に敏感になってしまった身体を持て余し、残された聖羅はわなわなと震えるしかなかった。


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