紅葉に覆われた京都は想像以上に美しかった。 やはり映像で見るのとは風情も迫力も違う。 駅からは移動用にレンタカーを借りたのだが、聖羅と赤屍はなるべく歩いて景色を楽しむようにしていた。 今も、渡月橋から少し歩いた先にある甘味処で、美しく色付いたカエデを観賞しつつ、わらび餅を食べているところだった。 早めに昼食を済ませていた為、小腹を満たすと同時に休憩をとろうと思い入った店だ。 「この辺りは夜間ライトアップされるそうですよ」 「あっ、知ってます!テレビのCMでやってました。実際に近くで見たら、凄く綺麗なんだろうなあ」 陽光を透かして輝く紅葉も素晴らしいが、ライトアップされた景色もさぞ美しい事だろう。 口の中で蕩けるわらび餅を食べながら、聖羅はその光景を想像してうっとりした。 抹茶を飲み終えた赤屍が、ふっと微笑む。 「残念ながら、今夜の宿はもう少し山のほうですので、日が暮れてからここまで出て来るのは難しいでしょうね」 「そうなんですか…」 そういえば、宿泊先について聖羅はまだ何も知らされていない。 赤屍の口ぶりからすると、町中の喧騒を避けて郊外の宿をとったのだろう。 聖羅としても賑やかなところは嫌いではないものの、どうせなら静かに過ごせる場所が良いので、願ったりの物件かもしれない。 「ですが、露天風呂からライトアップされた紅葉が眺められるとの触れ込みでしたから、ご期待には沿えると思いますよ」 「えっ、露天風呂があるんですか?温泉から紅葉が見えるの?」 「ええ。温泉に浸かりたいと言っていたでしょう? せっかくの紅葉の季節ですからね。温泉宿で夜も紅葉が楽しめる場所を探したのですよ」 「わあ…すごい!有難うございます!!」 紅葉を楽しめる露天風呂なんて、まさしく『恋人と行くロマンティックな旅行』の見本のようなシチュエーションだ。 「喜んで頂けて嬉しいですよ。私も探した甲斐があります」 俄然テンションが上がってはしゃぐ聖羅を愛おしげに見つめて、赤屍は柔らかいわらび餅にぷすりと楊枝を突き刺した。 その露天風呂が混浴であるという事実はもう少し秘密にしておこう。 そう考えながら。 |