あたたかい雨のように頭上から湯が降り注ぐ。 「熱くないかい?」 「大丈夫です」 あらかじめ温度調節をし、手の平で確かめてから浴びているので、丁度良い温度なのは間違いないのに確認せずにいられないのは彼が優しすぎるほど優しいひとだからだろう。 「シャンプーをするから目を閉じて」 「はぁい」 濡れた髪に泡立てたシャンプーを付けられ、寂雷先生のしなやかな指先がカシカシコシコシと頭皮を擦る。 シャンプーを洗い流したら、今度はコンディショナー。 髪を優しく撫で付けては梳いていく手つきにうっとりしてしまう。 髪を洗い終わった先生は、ボディソープを泡立てて私の身体を洗い始めた。 「なまえくん?」 思わず忍び笑いを漏らしてしまった私に、先生が問いかけてくる。 「ごめんなさい、何でもないんです」 「それならいいのだけれど」 壊れ物を扱うように大切に扱われるのは、嬉しいけれど少しくすぐったい。 ベッドの中では情熱的だった先生だが、行為の後、こうして一緒にお風呂に入る時は甲斐甲斐しい保護者のようになる。 「君は本当に可愛いね」 前言撤回。 保護者はこんなエロチックな手つきで身体を撫で回したりはしない。 ふふ、と小さく含み笑った先生の手が悪戯に動き、私は身体の奥でまだ燻っていた熱がじわりと身体を支配していくのを感じた。 ほんの少し前まで先生を受け入れていた場所がとろりと濡れるのがわかる。 「先生…」 「ごめん、少し悪戯が過ぎたね」 あっさりと退いた手を名残惜しく思いながらバスタブに入ると、先生は手早く自分の身体を洗い始めた。 「そんなに見つめられたら恥ずかしいよ」 立派な長身にバランスの良い肉体を、惚れ惚れとしながら眺めていると、寂雷先生に苦笑されてしまった。 「だって先生が素敵だから」 「ありがとう。そんな風に言われると嬉しいけれど少し照れてしまうね」 泡を洗い流した先生がバスタブに入って来る。 水位がぐんとあがって少しだけお湯が溢れた。 そのまま先生に後ろからすっぽり抱き包まれて、一緒にあたたかいお湯に浸かる。 「はぁ……幸せ」 「私もだよ」 心も身体もこれ以上ないほど満たされていた。 寂雷先生と過ごすこのひとときが、今までの人生の中で一番幸せな時間だと胸を張って言える。 聖人のような先生が、人間らしい寛いだ表情になる、この時間が私は大好きだった。 もちろん、先生に抱かれている時の身体で感じる狂おしいまでの愛情も、力強い腕にかき抱かれる感触も全てが好きだし、心から愛おしいと思う。 「先生……あの」 「なまえくん」 ゆっくりと振り返り、ごくりと喉を鳴らす。 「もう一回、いいかな」 ──ああ…私を見下ろす欲に濡れたこの瞳も、堪らなく好きだ。 |