夕方少し前から降り出した雨が、まだぽつぽつと降っている。 気象予報士がこれから雷雨だ雹だと言うのでどうなることかとビクビクしていたのだが、どうやら一段落したらしい。 降り始め頃はすぐ近くで鳴っていた雷も、もう何処かへ行ってしまった。 「ごめんなさい、赤屍さん。待たせちゃいましたか?」 「いえ、今来たばかりですよ」 ああ、カップルの会話だなぁとニヤけそうになる顔を引き締めて、迎えに来てくれた赤屍に駆け寄っていく。 スーツが怖いくらい似合う度を越した美形。 それが私服の赤屍だ。 ただ、やはり普通の勤め人には見えない。 アングラ世界の住人特有の雰囲気とでも言うべきものが、彼を非凡な存在として周囲の景色の中から際立たせている。 「メールを拝見しました。今夜はイタリアンでよろしいですか?」 「はい!」 赤屍の言葉に大きく頷き、聖羅は彼の車に乗り込んだ。 帰宅時間の少し前、雨が降り出したから迎えにいきますと赤屍からメールがあった。 良ければ夕食も一緒にという言葉に、二つ返事で承諾の返信を打ったのだった。 今夜は久しぶりのイタリアン。 やっぱりパスタがいいかな、ドルチェは何にしようか、などと考える内に、車はリストランテの駐車場に入っていった。 |