あの夜の出来事は夢だったのだと思うことにしていた。 そう考えるほうが、遊ばれたのだと考えるよりずっといい。 でも、彼は遊び人には見えなかった。 勝手な想像だが、遊ぶにしても、一夜限りの関係とお互いに割りきって楽しむタイプに思えた。 あの夜は色々な意味で随分みっともない姿を晒してしまった気がする。 呆れて幻滅されたのかもしれない。 一度考えはじめると思考は悪いほうへ悪いほうへと転がっていった。 自分から連絡を取ろうとしなかったわけではない。 しかし───もしも、えっ誰ですか?みたいな反応が返ってきたらと思うと、どうしても最後の最後で通話ボタンを押す勇気が出なかった。 あるいは今までに普通の恋愛経験があればこんな風にウジウジ悩まずに突き進めたのかもしれない。 いや、むしろこんな性格だからこそダメ男ばかりに引っかかってしまうのかもしれない。 容姿、頭の中身共にまあ普通だと思う。 モデル並みとはいかないものの、身長は高過ぎず低すぎずの程よい高さ。 足首や腰回りはしっかりくびれていながらも、尻や太ももなどの各所はむちっとしていて、胸もたっぷりボリュームがある砲弾型の巨乳。 でもそれがいけなかった。 初めて出来た彼氏と初めて部屋で二人きりになった時。 せまってきた彼に対して、「そういうコトはもう少し待って欲しい」と拒んだら、ふざけんなよと逆ギレされた。 「ヤレないならお前と付き合った意味ないだろ!」 当然その男とは即刻別れたが、優しい言葉や態度にコロリと騙されてしまった自分の見る目のなさに、暫くは立ち直れなかった。 しかも、その元彼が無いこと無いこと周囲にふれまわってくれたせいで、暫く変な男達にニヤニヤされたりして本当に嫌な思いをしたものだ。 友人達が庇ってくれたお陰で大学を卒業する頃には噂もすっかり消えていて、あの元彼も新しい彼女を見つけたらしかった。 勿論、周りにいる男すべてがダメ男だったわけではない。 中にはきちんとした考えを持ったまともな男性もいた。 だけど、そういう男性にはもう既に素敵な彼女がいて、恋愛には至らなかったのだ。 幸いにも、同性異性問わず友人には恵まれていたため、人間不信にまではならずに済んだ。 あくまでも恋愛対象として男性が苦手になってしまったというだけだ。 社会人になって、さすがにいつまでもこんなではマズイと危機感を覚えた私は、偶然目にした街コンに参加してみることにした。 |