「おはようございます、聖羅さん」 「おはよー…ございます…」 まだ眠い目を何度か瞬く間に、唇にキスが落とされた。 布団の誘惑を立ちきって何とか起き上がる。 「もう朝食の支度は出来てますよ」 「はぁい…」 洗面所に向かうまではまだ半分夢の中といった感じだったが、顔を洗って身支度を整える頃にはようやく頭もすっきりしてきた。 代わりにお腹がきゅうきゅう鳴り始める。 赤屍に言えば、「健康な証拠ですよ」と笑われるだろう。 ダイニングテーブルの上には完璧に朝食の支度が出来ていた。 赤屍が椅子を引いて座らせてくれる。 目にも鮮やかな黄色の、ふわふわトロトロのスクランブルエッグ。 焼きたてで、外はさっくり、中はふんわりしたクロワッサン。 ヨーグルトと、一口サイズにカットされたフルーツ。 今日も美味しそうだ。 「今日は夕方から仕事です。帰りには深夜か早朝になりますので、しっかり戸締まりをして寝ていて下さい」 「待ってたらダメですか?」 何だか急に寂しくなってそう言えば、「ダメです」と微笑み付きで即座に却下されてしまった。 「私に構わずゆっくり休んで体力を回復して下さい。そうして頂かなければ、休みの前日の夜に困る事になるのは貴女ですよ」 「ゆっくり休ませて頂きます」 激しい情交を思い出して、顔が火照る。 無意識の内に下腹部がきゅんと反応してしまうぐらいに仕込まれた身体だ。 ゆっくり休んで、そして、夜にはしっかり責任を取って貰おう。 朝食を終えて出掛ける支度を済ませると、玄関まで赤屍が見送りに来てくれた。 ドアを開ける直前に、行ってらっしゃいのキスをする。 「行ってらっしゃい。気をつけて」 「行って来ます。赤屍さんも気をつけて下さいね」 「ええ、過程を楽しんで来ますよ」 仕事で対峙する事になる相手が震えあがりそうな笑顔で答えて、赤屍は愛しい人を送り出した。 |