お注射されてしまった。 濃厚なのをたっぷりと。 お陰で休みだというのに朝からベッドの住人だ。 昨夜は本当に凄かった。赤屍蔵人の本気を見た思いだった。 室内には小さく音楽が流れている。 今ステレオから流れているのは『Rhapsody in Blue』。 後半のロマンチックな旋律部分をサックスの四重奏用にアレンジしたものを、更にサックスソロで演奏出来るように編曲し直したものが静かに流れている。 「大丈夫ですか?」 「大丈夫くないです…」 クスクス笑って、赤屍は食事の乗ったトレイをベッドサイドに置いた。 フワとろのスクランブルエッグとカリカリに焼いたベーコンとソーセージ。 焼きたてのクロワッサン。 シュリンプのサラダには新鮮なオリーブオイルを掛けて。 ヨーグルトにはベリー系の実が入っている。 「はい、あーん」 甘いテノールに促されて口を開く。 ホテルの朝食みたいなメニューは見た目通りとても美味しい。 一口でほわっとなるような美味しさだ。 ヒナに餌をやるみたいに甲斐甲斐しくスプーンを運ぶ赤屍は髪を後ろで縛っていた。 たぶん料理を作っていたからなのだろうけど、何だか新鮮なドキドキを感じて、ああ、この人が好きだなぁと、聖羅はしみじみ思った。 例え、休みの前日に張り切り過ぎて恋人を半病人になるくらい激しくいたしてしまったとしても。 それも愛の深さゆえと思えば、許せ…る。 いや、困るものは困る。 「もう…今日は一緒に住宅展示場に行くって言ってたのにどうするんですか!」 「動けませんか」 「動けませんよ!」 「では、明日にしましょう。今日はゆっくり過ごせばいい。…ね?」 「うう…」 優しく宥められてしまえば、それ以上文句も言えない。 「今日はたっぷり甘えて下さい」 緩く抱きしめられて、よしよしと髪を撫でられると、昨日たっぷりねっとり注がれた場所が鈍く疼いた。 こんな身体になってしまった責任を取って欲しい。 本当に。 「赤屍さんのばかばか!」 「クス…よしよし」 どうしてか、この男はやけに上機嫌で嬉しそうなのだった。 まるで、自分がいなければ生きていけないように少しずつ調教しているような気がしてゾクッとする。 でももう今更離れられない。 だから、朝食を食べ終えたら『おかわり』をねだってみようと思う。 毒を食らわば皿までというけれど、赤屍蔵人という男は常習性のあるとんでもない猛毒なのだった。 |