もう何がどうなってるのかさっぱりわからない。 赤屍さんと一緒に無限城にお使いに行く途中、突然辺りが真っ暗になって、前後左右上下が分からない不気味な感覚にとらわれたかと思うと、次の瞬間には小さな町の中に立っていた。 住民がいなくなってから年月が経っているらしく、建物の外も中も荒れ果てていた。 元は整地されていたはずの道も雑草が生え放題で、「廃墟になって久しいようですね」と赤屍さんも感想を述べていた。 その時までは私も何処か外国に飛ばされたのだと思っていたのだ。 赤い屋根の向こうに巨大な顔が現れるまでは。 それは巨人だった。 そうとしか呼びようのない存在だった。 その巨人が襲いかかって来た時、離れた場所から「逃げろ!」と叫ぶ声が聞こえてきたのだが、その時には既に巨人はコマギレにされた後だった。 震えあがって赤屍さんの後ろにぴったりくっついた私の前で、肉片がモゾモゾ動いている。 みるみるうちに再生していく巨人に驚いていたら、さっき私に声をかけてくれた人が、何かワイヤーのような物を使って宙を飛び去って行き、二本の剣であっという間に巨人のうなじの肉を削ぎ落とした。 どう、と倒れた巨人から蒸気のようなものが立ちのぼる。 そして完全に消滅してしまった。 「なるほど。うなじが弱点なんですね」 冷静に分析する赤屍さんと違い、私は完全にパニック状態だった。 なにこれ!ここどこ!?状態である。 しかし、困惑している暇すら与えられなかった。 またもや巨人が現れたのだ。 さっきのよりも大きいのが3匹、それより少し小さいのが5匹。 赤屍さんは、仲間の兵士から「兵長」と呼ばれていた人物と協力して巨人をさくさく倒していった。 こういう時、言葉よりも行動で意思疏通が出来る男の人は凄いと思う。 赤屍さんはその手腕を認められたのか、兵長さんと何か話した後、私を連れて彼らと共に馬で人間が住んでいる場所まで連れて行って貰った。 そこは、巨大な壁に四方を囲まれた都市だった。 外には巨大がうじゃうじゃいるから、こうして生活を守っているらしい。 私達は不審者として危うく審議にかけられるところだったが、兵長さんと、兵長さんが所属している調査兵団の団長さんの口添えで事なきを得た。 ただ、まあ、何の見返りも無しというわけには当然行かず、調査兵団の活動に協力することが条件として提示され、赤屍さんがそれを承諾したわけだ。 私達は調査兵団の宿舎に一時身を置く事になった。 単なる親切で、というわけではなく、監視しやすいからという理由なのだろう。 兵長さんも同じ建物で寝起きしているそうだ。 私はと言えば、赤屍さんにぴったりくっついて離れないようにしていた。 この世界では、一分一秒先に何が起こるか分からないのだ。 安全な場所は赤屍さんの傍しかない。 私の本能がそう告げている。 生き延びたければ彼から離れるなと。 |