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「こちらへどうぞ、聖羅さん」

籠盛りにしたみかんを手にリビングに戻ると、先にこたつに入っていた赤屍が軽くこたつ布団を捲って微笑んでみせた。
一緒に入れということだ。
聖羅はちょっと照れくさそうにしながらも素直に従った。
みかんはこたつの上に置く。

「受験生は大変ですね」

テレビの画面の中ではアナウンサーがセンター試験の時の受験生達や会場の様子を伝えている。
センター試験が終わり、いよいよ本格的な受験シーズンに突入した。

「聖羅さんは推薦だから余裕でしょう」

「うーん、どうなんでしょう?」

聖羅を両腕の間におさめたまま、赤屍の手がするするとみかんの皮を剥いていく。

「確かに、普通の受験の子よりは大変じゃないかもですけど、緊張や不安が全くないわけでもないですよ」

「そういうものですか」

「そういうものです」

言った口にみかんの実が差し込まれた。
甘い。
もぐもぐ咀嚼していると、頭の上にキスを落とされた。

「赤屍さんは?お医者さんだから大学行ったんですよね?」

「ええ、まあ」

「どうでした?」

「まあ、それなりに」

また口にみかんが。
今度のそれは、たぶん口を塞ぐのが目的だ。
これ以上聞いてくれるなという、やんわりとした牽制。
彼は元々あまり自分の事を話したがらない。
運び屋になる前の事は特に。

「赤屍さんも、あーんして」

だから聖羅はお詫びの意味もこめて、自分で皮を剥いたみかんを赤屍に差し出した。
クスッと笑んだ赤屍が口を開ける。
その唇の間に差し入れると、優しく指を咥えられた。

「甘いですね」

「もう…私は食べちゃダメですよぅ」

赤い顔でそう抗議したものの、やはり食べられてしまう運命にあるのだった。


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