たまに暖かい日があったかと思うと、また寒さがぶり返す。 近頃はそんな日々の繰り返しだった。 この寒暖差がくせ者なのだ。気温の上下が激しいと体調も崩しやすくなる。 それに引きずられたのか、最近はどうも調子が悪い。 仕事が行き詰まっていることも多いに関係していると思う。 「何か辛い事があったのですか」 帰ってきて顔を見るなりそう尋ねてきた赤屍に、聖羅は無理矢理笑顔を作って首を横に振った。 この程度で弱音を吐いていられない。 「大丈夫です。なんでもないですよ」 「貴女はずっとそうして何もかも飲み込んできたのですね」 ゆるく腕の中に囲い込まれて、スーツの胸板に顔をうずめさせられた。 「吐き出してしまいなさい」 上から振ってくるのは泣きたくなるくらいに優しい声。 「長年に渡って溜め込んだものは、そう簡単には無くなりません。それが貴女を内側から腐らせてしまう前に……さあ」 何か言おうと口を開いたが、次の瞬間には、わっと泣き出してしまっていた。 そんなつもりはなかったのに。 「よしよし。いい子ですね」 子供のように泣きじゃくる聖羅の頭を赤屍が優しく撫でる。 暫くそうして抱きしめられてよしよしされていると、少しずつ落ち着いてきた。 身体にあった重いものが砕けて流れ出ていったような気分だった。 「ごめんなさい…」 「謝る事はありません。嬉しいですよ。私を頼って下さって」 頬にキスを落とされ、唇にも。 「顔を洗ってすっきりしたら、食事にしましょう。今日は貴女の好きなものを作りますよ」 危うくまた泣いてしまうところだった。 ちょっと笑って頷き、それから顔を洗うために洗面所へ向かう。 その背後では、キッチンに入ってエプロンをつける赤屍が密かに微笑んでいた。 ──そうして、私がいなければ生きていけない身体になればいい |