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浴室のドアが開くと、中から熱気と共にボディソープの甘い香りが流れ出した。
その香りと湯気に包まれて出て来たのは赤屍だ。
腕には聖羅を抱えている。

「聖羅さん、大丈夫ですか?」

「…う…ん……」

明らかに大丈夫ではなかった。
くったりと力の抜けきった様子を見た赤屍は、クスッと笑ってタオルを手に取り、聖羅の身体から水分を拭き取ってやる。
彼女がこうなったのは自分のせいだという自覚があるので、こうして世話を焼いてやるのもやぶさかではない。

「眠ってしまっても構いませんよ」

「……ん……」

もはや完全に目を閉じて身を委ねている聖羅に下着を履かせ、パジャマを着せてやる。
自身も身支度を終えた赤屍は、再び聖羅を抱え、ベッドへと運んだ。

されるがままの柔らかな肢体をベッドに横たえて、自らもその隣に身体を滑り込ませる。
キングサイズのベッドは大人二人が乗ってもまだ余裕がある。
しかし、それはあまり関係がない。
聖羅の身体を腕に抱き込むようにしてしまえば広さなどはどうでも良い事だった。

「聖羅さん」

「…んん」

髪を梳き、口付けてやれば、半ば眠りの中にありながらも健気に応えてくる。
舌を絡めてから離してやると、呼吸は既に穏やかな寝息に変わっていた。

「少し無理をさせすぎましたかね」

そう言う割には赤屍に反省の色はない。
むしろ、心ゆくまで堪能し尽くして満足していた。

寝台で5回、浴室で1回。
これ以上されたら死んじゃいます…というのが、最後に聖羅が発する事が出来たまともな言葉だった。
後はひたすらあんあん鳴かされて、途中で何度か意識を飛ばしたお陰で今はこの有り様である。
聖羅にしてみれば、絶倫の恋人を持つとはどういうことか、身を持って知った感じだ。

一見ストイックに見えるらしいが、自分は完全に肉食だと赤屍は自認している。
特に、聖羅に関しては。
欲情するのも欲しいと思うのも聖羅だけだ。

「愛していますよ、聖羅さん」

耳元で囁かれた甘いテノールに、聖羅の身体がぴくりと反応する。
無意識に身をすり寄せてくる聖羅を抱きしめながら、赤屍は深い満足感に浸っていた。
銀次や蛮と本気でやりあったとしても──そうしたいのは山々だが──ここまでの満足感を味わえるかどうか。
聖羅に関する欲求と、戦闘による己の底を知りたいという欲求とは、また別種のものだと赤屍は考えている。
こんな事は聖羅と出逢うまでは知りもしなかった。

「愛しています。貴女だけを、心から」

聖羅の耳に囁きかける。

明日の朝起きれば、きっと、「いくらなんでもやりすぎです!」と可愛いお叱りを受けてしまうだろう。
それを思えば思わず笑みが浮かぶ。

「本当に……可愛い方ですね、貴女は」

優しく優しく聖羅の背中を撫でて、赤屍はそっと瞳を閉じた。


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