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バレンタインの夜、赤屍と高級そうなレストランでディナーを食べたところまでは覚えている。
メインは鴨肉のローストのオレンジソースがけだったことも。
赤屍から逆チョコを貰って食べたことも。

だが、そこから先の記憶が曖昧だった。

けれども、何があったかは大体わかる。
何故なら、全裸でベッドに横たわっていて、あまり考えたくない色々なもので汚れた身体を、嬉しそうな顔をした赤屍が丁寧に拭いてくれているからだ。

身体を清めてくれるホットタオルの感触は心地よく、このまま微睡んでしまいそうだった。
それでなくともくたくたに疲れきっていたので。

数えていたわけではないが、少なくとも5回は射精された。
お腹の中にも、身体の上にも。
根元まで挿れられて何度も執拗に膣内射精されたことを思い出してゾッとした。

「…赤ちゃん…」

「そうですね。出来たかもしれませんね」

赤屍は嬉しそうだ。
ずっと機嫌がいい。
最中も、その後も。

切々に蘇る記憶の中で、この男はずっと笑っていた。
それはそれは愉しそうに。

「どうしました?聖羅さん。まだ動いてはいけませんよ」

身体を起こそうとすると止められる。
甲斐甲斐しく拭き清められた身体に、毛布と布団を掛けられた。

「お仕事、」

「マスターには連絡してありますから、今日の仕事は休みなさい」

既に手を打たれていたことを知って、一瞬気が遠くなる。
誰にも助けてもらえない──そんな絶望感にとらわれて身体を震わせると、よしよし、と頭を撫でられた。

「何も心配いりません。今日から貴女はここで暮らすのですよ。私と二人で…ね」

「…、…」

「家事は私がやります。料理も、洗濯も、掃除も、何もかも任せてくれていいのですよ。貴女がやりたいというのなら、止めはしませんが、無理はしないで下さいね。大事な、大事な、身体なのですから」

「……ふぇ……」

「出来れば仕事も辞めて頂きたい。何度も言いますが、無理は禁物です。安定期に入るまでは特に気をつけなくては」

ふえぇ…と半べそをかくと、優しく、優しく、愛おしげに頬を撫でられた。

「やっと手に入れた……もう離しませんよ。何があろうと、絶対に…ね」

「ひ…」

「まだ怖いのですか?怖いことなど何もないでしょう」

直に肌に触れている毛布の感触が気持ちいい。
布団もふわふわしていて軽くてあたたかい。
このまま眠ってしまえたら……次に起きたら、何もかも夢だったら、どんなに幸せだろう。

「愛しています、可愛い人。今夜は何が食べたいですか?お好きなものを作りますよ」


お願い

誰か、助けて

誰か


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