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また今年も地獄の季節がやって来た。

目玉を取り外して丸洗いしたい。
花粉症に悩む者なら誰もが一度は考えることではないだろうか。

「そうだと思って用意してありますよ」

帰宅するなり(当然衣服に付着した花粉は落としてからだ)、恋人である医師はそう言って洗眼薬を差し出してきた。

「赤羽先生!!」

「綺麗に洗ってすっきりしましょうね」

「はい!!」

ご使用に際して商品の説明書きを必ずお読みください、とあったので、まずは説明書をじっくり読む。
すると、思っていたよりも面倒なアレコレがあることがわかった。
30秒以上洗眼するなだとか、容器は事前に流水で洗ってから使うだとか、注意点が沢山ある。

「今年初めて使いましたけど、結構面倒なものなんですね」

「まあ、後は慣れでしょうね。何度も繰り返し使用していればその内手順も頭に入ってそれほど面倒とは感じなくなるのではありませんか」

「そういうものでしょうか」

でも、手順に従って洗眼すると確かにすっきりした。
目の充血も大分おさまってきたようだ。

「赤羽先生〜」とソファに座る恋人の膝に甘えれば、よしよしと頭を撫でてくれる。
ああ…癒される…。

先生も忙しくて疲れているはずなのに、こうして甘やかしてくれるのだから、本当に優しい人だと思う

「鼻は大丈夫ですか」

「今のところはまだムズムズするぐらいです」

これからたっぷりティッシュのお世話になることだろう。
今の内に対策を考えておかないと。
やっぱりノーズスプレーかな。

「今日は一緒にお風呂に入りましょうか、聖羅さん」

「洗ってくれるんですか?」

「ええ。隅々まで丁寧に、ね」

ああ、どうしよう。
切れ長の瞳を緩く細めて微笑む赤羽先生があまりに色っぽくて、えっちな気持ちになってしまった。
今日はそういう予定じゃなかったのに。
まだ火曜日なのに。

「私も先生を洗ってあげます!」

「有難うございます」

先生の極太ブラシで擦り洗い…とか想像してしまった私はもうダメだと思う。
これも全部花粉のせいだ。
花粉が脳を侵しておかしくしているに違いない。
花粉症こわい。

「先生、早くはやく!」

「クス……良いですよ。行きましょうか」

先生を引っ張って浴室に向かう私の胸は期待ではち切れんばかりになっていた。

可笑しそうに笑う赤羽先生の服を脱がせて、自分もすぱーんと裸になる。
いつもはこんなに積極的でもないし、もっと恥じらいがある。
これは全部花粉のせいなのだ。
花粉症が全部悪い。

「綺麗にゴシゴシして気持ちよくなりましょうね」

「はい!」

ゴシゴシ擦り洗い最高です。


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