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日中は気持ちの良い快晴だった。
夜になって残念ながら少し雲が出てきたけれども、夜桜見物にはさほど影響はないだろう。

「聖羅さん、寒くありませんか」

「大丈夫です」

車内の温度は適温に調節されていてあたたかいし、膝の上には念のためにブランケットが掛けられている。

二人を乗せた車は今、郊外の桜の名所に向かって進んでいた。
何でもライトアップされている夜桜の中でも穴場スポットなのだとか。

都心から車で約一時間。
本当にここでいいのかと不安になりかけた時、窓の外にライトアップされた夜桜が見えた。

「わあっ!綺麗!」

「喜んで頂けて良かったですよ」

近くで見ようということで、車を降りて桜を見上げる。
下からライトで照らされた夜桜は妖艶で美しく、どことなく赤屍の雰囲気に通じるものがあった。

強い風が吹き、はらはらと桜の花びらが舞い落ちてくる。

「綺麗ですね」

「ええ、本当に」

赤屍が聖羅の肩を抱く。
春とは言え、まだ夜は冷える。
そうして触れ合うとぬくもりが伝わり、気持ちも身体もほんわかとあたたかくなった。

「さあ、戻りましょう」

「えっ、もう?」

「聖羅さんが風邪をひいてはいけませんから」

まるで自分は風邪をひかないと言わんばかりの口ぶりだが、確かにこの男ならありえそうだ。

「ゆっくり眠れるように、少しその辺りを流しながら帰りましょう」

「はい」

「眠ってしまって構いませんからね」

赤屍の言葉通り、聖羅は帰りの車の中で眠ってしまった。
あたたかく、満ち足りた空間の中では睡魔に勝てなかったのだ。

そうして甘い眠りの中で、愛しい恋人に似た儚い花の夢を見た。


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