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※赤ちゃんがいます



妊娠してから眠たくて仕方がない。
今日も、昨夜たっぷり眠ったはずなのにお昼どきにはもう眠くて眠くて我慢出来ずにお昼寝してしまった。

「そういう時期なんですよ」

洗い物をしながら蔵人さんが笑う。
率先して家事をやってくれる彼は良い旦那様だ。
腕捲りをしたその肘から手首までのラインに男の色気を感じてしまう私はえっちなのかもしれない。
えっちな妊婦さんって良いのだろうか。
身重の身となってから前より性欲は減った気がするが、まったく無くなったわけじゃない。
身体に負担がかからない程度に軽く行為に及ぶこともある。
絶倫魔人の蔵人さんに散々調教されて彼に慣らされた身体は、もうえっちなことなしでは耐えられなくなっているのかもしれない。

「睡眠は栄養にもなります。そういう意味では、赤ちゃんが栄養を欲しがっていると言っても良いでしょう」

「そうなんですか」

「ええ。だから今はたっぷり眠って、お腹の赤ちゃんに栄養をあげて下さい」

「はい、蔵人さん」

「いい子だ」

キュッと水道を止めた蔵人さんは、濡れた手をタオルで拭いてからその手で私の頭を撫でた。
彼はきっと良い父親になる。
優しく賢く、頼りになるお父さんになるだろう。
私が娘だったら、自慢の父だ。
この子もそう思うだろうか。

ねえ?どうかな?
とお腹を優しく撫でると、ぽこんと軽くお腹の内側から返事があった。
この子はまるで私の考えていることがわかるかのように思える時がある。

「動いているんですか」

蔵人さんがすぐに反応して、私の前に屈み込み、お腹に耳をつけた。
とても優しい表情で瞳を細めるその姿を、運び屋としての彼を知る者が見たらきっと驚き戦慄するだろう。
まさか、あのDr.ジャッカルが、と。

「元気な良い子ですね」

「はい、本当に」

これなら安心だという風に微笑んだ蔵人さんに、私も笑顔を返す。
早く元気に生まれてきて欲しい。

「さて、お風呂に入りましょうか」

いつの間にか洗い物は丁寧に拭かれて食器棚に片付けられており、蔵人さんがまた私の頭を撫でた。

「私が洗って差し上げますよ。マッサージもしましょうね」

「有難うございます」

蔵人さんにぎゅうと抱きつくと、お腹がまたぽこりと蹴られた。
どうやらこの子はやきもち焼きのようだ。
思わず笑ってしまう。

「今幸せですか、聖羅さん」

「とっても。蔵人さんは?」

「私もですよ」

優しい口付け。
触れて、ついばむそれにうっとりしてると、ぽこぽことお腹を蹴られた。
これは……どっちにやきもちを焼いてるんだろう?

「私にでしょうね」

「え」

「いえ、こちらの話です」

さあ、行きましょうと促されて脱衣場に移動する。
万歳をして服を脱がして貰っている間も、脱ぎ終わってお風呂に入った後も赤ちゃんは動かなかった。
もう眠ってしまったのかもしれない。
本当によく寝る子だ。

後ろから私を抱え込んでいる蔵人さんの手が、するりと内腿を撫でる。

「少しだけ…良いですか?」

蔵人さんからのお誘いに私は一も二もなく頷いた。

いい子だからもうちょっとだけ眠っていてね、とお腹の赤ちゃんに言い聞かせながら。


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