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久しぶりに着た晴れ着は少々窮屈だったが、赤屍に、「綺麗ですね、とてもよく似合っている。まるで姫君のようだ」と誉められたので良しとする。
そういう赤屍は、黒いハイネックのカシミアのセーターに同色のロングコート。下も黒と、相変わらずの黒尽くめだ。

「大丈夫ですか?」

「は、はい。凄い混みようですね…」

「今年の恵方にある一番大きな神社ですからね」

列に並んで、前へ前へ。
ようやく拝殿の正面に立った聖羅は、軽く会釈をし、鈴を鳴らした。
賽銭箱に小銭を投げ入れ、2回頭を下げておじぎをしてから胸の高さで手の平を合わせて二拍手。
そうして心の中でしっかりと願い事を祈ると、最後にもう一度頭を下げてからその場を退いた。
あっという間に人混みに流されそうになるが、すぐに腕を取られて優しく引き寄せられる。
赤屍だ。

「願い事は出来ましたか?」

「はい、ばっちりです。有り難うございます」

「いえ、こちらこそ誘いを受けて下さって有り難うございました」

初詣に行きませんか、と赤屍に誘われた聖羅は二つ返事で了承した。
大好きな人と一緒に過ごせるなんてお正月から縁起が良い。
寒さも人混みも何のそのだ。

「そこのテントで甘酒を配っているようですよ。行きましょう」

「はい!」

赤屍に庇われながら人混みの中を進んでいき、テントで甘酒の入った紙コップを貰う。
少し外れた場所で二人して乾杯した。
口をつけ、こくりと飲むと程よい甘さが広がり、身体がほかほかとしてくる。

「今日はこのまま私の部屋へ来て頂けますね?」

耳元で甘く囁かれ、聖羅は甘酒のせいではなく顔を赤らめた。

「今日は…あの…晴れ着だから…」

「着付けなら出来ますのでご心配なく」

「そ、それなら…その、よろしくお願いします」

クス、と笑った赤屍に肩を抱かれて、紙コップはゴミ箱へ。

「では、参りましょう姫君」


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